賃貸借について|インタビュー|弁護士が伝える投資不動産の基礎知識|一般社団法人 投資不動産流通協会

弁護士が伝える投資不動産の基礎知識

2017年02月20日

賃貸借について

先生こんにちは。相変わらず寒いですね。


そうですね(笑) 今年は雪降るのでしょうかねぇ。


 interview5th.jpg


昨年の11月早々に雪が降りましたが、また大雪がありそうですね。
さて先生、本題に入らせていただきます。投資用不動産は、居住用不動産と異なって、特に、賃借人(借主)が存在する点で、権利関係が複雑になります。 賃貸管理、仲介を経験されている会員様はその辺り詳しいのでしょうが、そうでない会員様も多く、よく問合せがきます。
ですので今回からのコラムは賃貸借について解説をしていただきたく思います。


はい、わかりました。


珍しい相談事例として、賃借人が逮捕されて賃料に未払いが生じたケースがありました。
この場合、賃借人を退去させ、荷物を撤去する事は出来ないのでしょうか?


なるほど。未払い期間はどの位あったケースでしょうか?


すみません、そこまでは把握していません。


わかりました。私は、同様ケースとして、逮捕された賃借人の刑事弁護を引き受けたことがあります。その件は執行猶予付き判決が見込まれていたため、私から賃貸人にお願いして、賃料支払いの猶予を受け賃貸借契約を維持していただきました。


執行猶予が付くとそういった交渉も可能なのですね。


はい。契約の債務不履行が発生した場合、民法上の原則では、他方当事者は、契 約を解除することができます。
ただし、賃貸借契約の場合は、賃借人の生活の基礎を保護する観点から、判例により一定の解除制限がされており、債務不履行が賃貸人との信頼関係を破壊する程度に至った場合に限って解除できるという法理(信頼関係破壊の法理)が確立しています。


例えば賃料の滞納の場合、どの位の期間で信頼関係が破壊させると考えられるのでしょう か?


賃料未払いの場合は、概ね3か月分の賃料未払いがあるか否かが信頼関係破壊の目安とされていますので、それ以上の賃料未払いがあれば賃貸借契約の解除が可能です。
賃料未払いの原因がたとえ逮捕・勾留だったとしても、それは賃借人側の事情であり、賃貸人にとって信頼関係を破壊されたことには変わりはありません。 そして、賃貸借契約が解除された後に、賃借人所有の残置物がある場合、賃借人は賃借権という権限なく居室を不法占有していることになります。


なるほど。居室内に賃借人の残地物がある場合、賃貸借契約が解除されれば強制的に撤去しても良いのでしょうか?


それが出来ないのです。賃貸借契約が解除によって終了したとしても、刑事上は、 住居の平穏が存在する限り、賃借人の占有という事実状態は維持されていると考えられており、賃貸人は、無断で居室内に侵入し残存物を持ち出したり、勝手に処分または廃棄したりすることはできません。犯罪になります。


え?そうなのですか。ですが、賃貸人は、第三者に居室を賃貸する事によって収益をあげる事を目的として投資用不動産を購入・保有するのですが、それが出来なくなるわけですよね。


そうなのです。その場合、賃借人に対して、別途、賃料相当分の損害賠償を請求することで金銭的に解決するほかはありません。


逮捕されて賃料を支払えるかどうかわからない賃借人に、損害金を請求して支払ってもらえる見込みはあるのでしょうか?


おっしゃる通りです。賃貸人としては、一刻も早く別の第三者に居室を貸したいと思うでしょう。 その場合、賃貸人は、建物明渡請求訴訟を提起し、勝訴判決を取得した上で強制執行(明渡執行)をする必要があります。


時間も費用も掛かりそうですね・・・。


そうですね。強制執行をする場合、弁護士費用のほか、20平方メートル程度のワンルームマンションで概ね40万円程度の費用がかかりますので、できれば、刑事事件の弁護人を通じて、賃貸借契約の合意解約と残置物の引取りなどを進めたいところです。


なるほど。先生がご経験された執行猶予付き判決が予想された事件でも、そのあたりを説得材料として賃貸借契約が維持されるように交渉されたのですね。


そうですね、丁寧に説明した結果、契約解除をするよりも得策とご理解いただけたのではないでしょうか。


でも、そのような場合はいいとして、そもそも賃借人が行方不明、音信不通といったケースでは、どうなるのでしょうか?


この場合も、さっきお話した事とほぼ同様で、賃貸借契約の解除自体は可能ですが、残置物の処理を自由に行えるわけではありません。
しかも、行方不明の場合は、執行猶予付き判決で賃借人が帰宅することや弁護人を通じた処理を期待することができません。 賃貸人が居室の明渡しなどを進めたい場合は、やはり建物明渡請求訴訟を提起して強制執行をするほかないでしょう。


なるほど。手間が掛かりますね。このような場合に備えるためにも、資力のある連帯保証人を付けておくことは重要ですね。


そうですね。しかし、賃借人が逮捕された、または行方不明になった場合に、居室を明け渡すことを連帯保証人に請求することはできません。
ですが、未払い賃料や契約解除後の賃料相当損害金を請求することはできますし、明渡し執行のための費用などを連帯保証人に請求することもできますので、賃貸借契約に際して、連帯保証人を付けておく事はとても大事ですね。


ありがとうございます。未払いなどの債務不履行によって来得られるべき収益が得られないと、 賃貸経営にも大きな影響を及ぼします。万が一そのような場合に陥っても、連帯保証人を付けたり、保証会社の保証制度を利用するなどの対策を講じておきたいですね。

また、場合によっては、弁護士に相談する方が、最も合理的な解決策を提案してくださる場合もありますね。

次回は、賃貸借に関わる内容で、より売買実務に関連しそうな問題についてお話をしていただきたいと思います。 先生、ありがとうございました。


ありがとうございました。


弁護士 池田 理明 第二東京弁護士会所属



[所属事務所]
東京桜橋法律事務所



[経歴]
平成12年3月
中央大学法学部法律学科卒業

平成17年11月
司法試験合格

平成19年9月
弁護士登録
東京桜橋法律事務所入所

平成25年1月
同事務所パートナー弁護士に就任 



[主な取扱分野]
中小企業の法務全般、不動産取引、
訴訟案件、倒産事件、刑事事件他

弁護士が伝える投資不動産の基礎知識

カテゴリー

過去アーカイブ