契約中の原状回復費用や敷金の返還義務は売主、買主どちらにあるのか?|インタビュー|弁護士が伝える投資不動産の基礎知識|一般社団法人 投資不動産流通協会

弁護士が伝える投資不動産の基礎知識

2017年09月11日

契約中の原状回復費用や敷金の返還義務は売主、買主どちらにあるのか?


毎日暑いですね。でも、今年の夏は雨が多く天気の悪い日が多かったですね。


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そうなんですよね、まるで梅雨に戻ったような日も続きましたし、残暑も厳しいみたいですが、元気に乗り切っていきたいと思っています。 さて、先生、投資用不動産(アパート、賃貸マンション)には所有者(=賃貸人)、賃借人がおり、所有権や賃借権などが複雑に絡み合っています。


そうですね。居住用不動産の売買仲介より複雑かもしれませんね。


そうなんです。権利関係が多少複雑なため、嫌煙しがちな不動産会社さんも多いみたいですが、当協会としては、投資用不動産実務のポイントをしっかり抑えてもらうような研修や講習を定期的に設けています


はい。登録講習や実務研修といったものですね。


そうです。投資用不動産に関して、会員の方から特によくある質問が、「売買契約締結時、原状回復費用や、敷金の返還義務は売主、買主、どちらが負うべきなのか」といった質問です。


なるほど。投資用不動産の売買の場合、いつ遭遇してもおかしくない事象ですね。


実際、売買契約締結後に、賃貸借契約が終了し、賃借人が物件を明け渡したような場合、原状回復の工事費用や敷金の返還費用は、売主、買主、どちらが負担するものでしょうか。


うん。しかし、この問題は、一概には結論を出せない問題を含んでいます。


そうなんですか。 売主、買主、どちらが負担すべきか基準となるようなものはないのでしょうか?


どちらが負担するかを決める大きなポイントは、売買物件の引渡し日(つまり鍵の引渡しの日)ではなく、売買契約書に定める売買物件の所有権移転時期と賃借人との賃貸借契約の終了時期のどちらの時期が先かという点です。


といいますと?


たとえば、売買代金の決済日に所有権が移転する場合(一般的な場合)について解説すると、売買代金の決済日より後に賃貸借契約が終了する場合(決済日より先に賃借人が退去したとしても)、上記の費用は、いずれも買主が負担するべきと考えられます。


なぜですか?


それは、所有権が移転した時点で、賃貸人の地位が売主から買主に移転しているという民法の原則的な考え方が背景にあるからです。


なるほど。決済日に買主に所有権が移転する以上、その時点で賃貸人たる地位は買主に移転していると。


そうです。ですから、その後に賃貸借契約が終了した場合は、買主が賃貸人としての責任を負担するべきだと考えられています。


なるほど。では、今の事案に対して、売買物件の売買契約は締結したものの売買代金の決済日より前に賃貸借契約が終了する場合はいかがでしょうか?


これは、実際の当事者の意思まで考えると、なかなか難しい問題が生じます。


なぜでしょうか? さきほどの論理をそのまま当てはめると、賃貸借契約が終了した時点では、まだ売主に所有権があるのですから全て売主が費用負担するようにも考えられるのですが・・・。


はい。売買代金の決済日より前に賃貸借契約が終了し、賃借人も退去するような場合は、そう考えても問題はなさそうです。 しかし、原状回復の工事も敷金返還も賃借人が退去した後に生じる問題ですので、もし、売買物件の決済日より後に、賃借人が退去した場合、売主の立場からすると、実際の工事や敷金返還は所有権が移転した後に発生することなので買主に負担して欲しいと思うでしょう。


確かに。反対に買主の立場からすると、もし自分が費用を負担するのであれば、その分、売買代金を少なくしたかったと思うでしょうね。


そのとおりです。民法上は色々な考え方があり得ると思いますが、不明確さを残すよりは、協会が推奨しているとおり、賃借人がいることを前提とした不動産の場合では、事前の取り決めをしておくのが得策です。現実に、買主側から敷金分を賃借人に返還する取り決めとする場合、さきほどの論理からは説明できない取り決めとなりますので、賃借人の合意をとっておく必要も生じます。事前の取り決めにより無用の紛争を回避しておきたいところですね。


当協会の契約書、重要事項説明書では、その紛争を回避出来るような仕様となっております。会員の皆様、取引士専用ログインページにアクセスし、『物件チェックシート』など当協会の推奨資料を活用して、安全で安心出来る取引を心がけましょう。 先生、今回もお忙しい中、ありがとうございました。


ありがとうございました。


弁護士 池田 理明 第二東京弁護士会所属



[所属事務所]
東京桜橋法律事務所



[経歴]
平成12年3月
中央大学法学部法律学科卒業

平成17年11月
司法試験合格

平成19年9月
弁護士登録
東京桜橋法律事務所入所

平成25年1月
同事務所パートナー弁護士に就任 



[主な取扱分野]
中小企業の法務全般、不動産取引、
訴訟案件、倒産事件、刑事事件他

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