投資用不動産を取得した場合において賃借人の未払い賃料債権|インタビュー|弁護士が伝える投資不動産の基礎知識|一般社団法人 投資不動産流通協会

弁護士が伝える投資不動産の基礎知識

2018年09月21日

投資用不動産を取得した場合において賃借人の未払い賃料債権

先生こんにちは。今年の夏はとても暑い日が続きましたね。


本当ですね。


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さて、今回は投資用不動産を取得した場合において賃借人の未払い賃料債権について伺いたいと思います。


それにはまず、中古建物を投資用不動産として取得した際に、既に存在する賃借人との間で賃貸借契約は、どういう手続きで承継されるのかを確認しておく必要があります。


詳しく教えていただけますか。


分かりました。まず、民法の一般原則から考えてみましょう。民法の一般原則からすると、契約当事者双方の合意がない限り、賃貸借契約を含む契約上の地位が第三者に承継されることはありません。


ということは、賃貸建物の所有権が売主から買主に移転したとしても、売主と賃借人との間で締結された賃貸借契約上の地位は、一般原則としては、買主に承継されることはないということでしょうか。


そうなります。よって、あくまでも一般原則ではありますが、所有者である新しい賃貸人は、何ら契約関係のない賃借人(建物占有者)に対して、建物から退去するように主張できることになります。これは、ローマ法以来の格言で「売買は賃貸借を破る。」といわれる原則です。


しかし、この法理を貫くと、賃借人はいつ生活の拠点となる賃借権を失うか分からず、非常に不合理な結論となります。


そこで、借地借家法は、この一般原則を修正し、建物の引渡しがあっても、賃借人は自己が保有していた賃借権を、「その後その建物の物権(所有権)を取得した者に対し」ても対抗することができる(借地借家法31条)としています。このように、現代の日本法では、ローマ法以来の「売買は賃貸借を破る。」という一般原則について、これを修正するケアーがなされています。 しかし、更に進んで、賃借権を対抗できる賃借人と新所有者との間の法律関係については、民法には明確な定めがありません。


たとえば、賃借権を対抗された賃貸人は、賃借人に対して、賃貸人としての権利行使(賃料の請求など)ができるのかという問題については、成文では明確には解決されていないのですね。


はい。そこで、これまでの裁判例の蓄積により、「賃借人の地位の移転」という論理が定説化しました。これは、賃借権が付いた建物所有権が移転すると、当然に、つまり賃借人の同意なく、賃貸借契約上の賃貸借人の地位も承継するという論理です。


本来であれば、賃貸人の地位は、賃貸借契約の当事者全員の同意がなければ第三者に承継されることがないのに、同意がなくても賃貸人の地位が承継するのですから、これも民法の一般原則の例外を認めているということでしょうか。


そうです。このような論理が通説・判例として確立している結果、新しい所有者は、賃貸人としての立場で、賃借人に賃料を請求できるという結論になります。


反対に、賃貸人は、賃借人が退去する際に、敷金を返還する義務も承継すると。


おっしゃる通りです。このように考えると、民法上の解釈としては、中古建物を投資用不動産として取得した場合、特に、何らの手続きをとることなく、既に存在する賃借人との間で賃貸借契約は、承継されることになります。

もっとも、この結論は、民法で成文化されているわけではなく、あくまでも判例の集積によるものです。全ての人が理解しているものではありませんので、予め、売買契約において、明確に承継に関する事項を定めておくことが肝要ですし、賃借人に対して、振込先口座の変更などの通知をしておくことも肝要です。


ありがとうございました。次回は、未払い賃料債権の引継ぎや、預り敷金での清算が出来るのかどうかについて伺いたいと思います。


ありがとうございました。


弁護士 池田 理明 第二東京弁護士会所属



[所属事務所]
東京桜橋法律事務所



[経歴]
平成12年3月
中央大学法学部法律学科卒業

平成17年11月
司法試験合格

平成19年9月
弁護士登録
東京桜橋法律事務所入所

平成25年1月
同事務所パートナー弁護士に就任 



[主な取扱分野]
中小企業の法務全般、不動産取引、
訴訟案件、倒産事件、刑事事件他

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