「瑕疵担保責任」について 1|インタビュー|弁護士が伝える投資不動産の基礎知識|一般社団法人 投資不動産流通協会

弁護士が伝える投資不動産の基礎知識

2016年08月10日

「瑕疵担保責任」について 1


こんにちは。今月から会員の皆様により多くの知識を身に付けていただこうと、当協会法律アドバイザーの弁護士池田理明先生に、不動産売買の実務に関わる法律やコンプライアンスの解説をしていただきたく思い、お時間をいただきました。先生、よろしくお願いいたします。


よろしくお願いいたします。


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第1回目という事で、これは投資用、居住用を限らず不動産実務経験者なら必ず理解をしておかなくてはならない「瑕疵担保責任」についてお伺いしたいと思います。不動産の売買契約書でよく目にする
「瑕疵担保責任」とは何でしょうか。債務不履行責任の一種でしょうか。


「瑕疵」という言葉は、非日常的な言葉で馴染めませんが、これは、欠陥とかキズを意味する法律用語です。
たとえば、居住用の建物を購入したところ契約締結時に既にシロアリなどにより土台が侵食され、建物の耐久力上の危険性を有していたとしましょう。
この場合の「土台の侵食」が不動産の「瑕疵」に当たります。


では、このような不動産を売り渡してしまった売主には、どのような責任が生じるのでしょうか?


はい。まず、民法の基本的な考え方(民法483条)では、不動産の売主は、売買の対象となる不動産を、
現状ありのままの姿で引き渡す義務があると考えられています(これを「本来的義務」といいます。)。


なるほど。しかし、先ほどのシロアリの例の場合にも、売主の責任が本来的義務だけと考えると、不公平ではないでしょうか。せっかく高い金額を支払って建物の購入をしたのに、土台の侵食で住めないとなれば、
買主は、到底納得できませんよね?


そうですね。法律的に表現すると、「双務契約の対価的均衡」を維持できないことになります。
そこで、民法570条は、売主の付属的義務として、「売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは」、第566条の規定を準用して、つまり「買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。」と定めています。

先ほどの例になぞらえて分かりやすく説明すると、シロアリにより土台が侵食されていたことを知らなった買主は、その侵食によって住宅用の建物として①住むことができない場合は契約を解除することができ、また、②住むことができる場合は(契約を解除することはできませんが)損害賠償請求ができると定めています。



なるほど。それが売主の瑕疵担保責任の内容ですか瑕疵担保責任は債務不履行責任の一種なのでしょうか?


瑕疵担保責任は債務不履行責任の一種なのかと問われると、本来的義務には違反していないのですから、債務不履行責任ではないと考えられています。

それではどういう位置づけの責任かというと、現在の通説や判例では、瑕疵担保責任は、民法が定めた付随的義務(瑕疵のないものを引き渡す義務といってもよいでしょう。)には違反しているという意味で法定責任(つまり帰責事由が要求されない無過失責任)と考えられています。

もっとも、このあたりは、現在、法制審議会民法(債権関係)部会で民法改正が検討されており、「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」(平成23年4月12日)でも、瑕疵担保責任を法的責任ではなく契約責任と構成するのが妥当ではないかという議論がなされています。


次に、民法改正の話題に触れた際、少し意識してみると興味をもてるかも知れませんね。 
先生、どうもありがとうございました。


ありがとうございました。




弁護士 池田 理明 第二東京弁護士会所属



[所属事務所]
東京桜橋法律事務所



[経歴]
平成12年3月
中央大学法学部法律学科卒業

平成17年11月
司法試験合格

平成19年9月
護士登録、東京桜橋法律事務所入所

平成25年1月
同事務所パートナー弁護士に就任 



[主な取扱分野]
中小企業の法務全般、不動産取引、
訴訟案件、倒産事件、刑事事件他

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