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2022年08月22日

賃貸経営のための保険講座~ 10月の保険料率・制度改定で火災保険はどう変わる?

・火災保険を取り巻く環境の変化
前回話題に採り上げた損害保険会社の「責任準備金」。この積立金の存在があるからこそ、自然災害が相次いだとしても損害保険会社は安定した経営が成り立っているのである。

しかしながら、近年の自然災害の規模とその発生頻度は、これまでの想定を遙かに超えるものであり、2018年、2019年に相次いだ大型台風などにより、主に激甚災害に充てる「異常危険準備金」は半減したともいわれている。
近年繰り返されている火災保険料の値上げは、この「異常危険準備金」の目減り分を補填していくためのものであるが、その他にも値上げの要因は数多ある。

支払保険金の一部を海外の保険会社などに転嫁する「再保険」の保険料も、日本の自然災害リスクの高さを反映して高騰している。

また、特定業者による保険金の不正請求が急増したこと、それに対応する損害調査の厳格化のための費用増などもその要因だ。令和4年10月に行なわれる火災保険料率・制度の改定は、まさにこれらに対応するための改定となる。

・2022年10月火災保険料率・制度改定の概要
①全国的に保険料は値上げへ
特に築古物件の値上がりが顕著なようだ。これは築古物件が耐火性能等で劣るということだけではなく、建物の老朽化・経年劣化が災害被害を拡大させる傾向が高いことを踏まえてのものだ。

また、耐用年数の長いRC造物件については、給排水設備をはじめとした付属設備の老朽化が影響した事故など、自然災害以外の事故が増えていることを考慮し、大幅な値上げとなる。逆に新築のRC造は全国で横ばいまたは値下げとなる。

②最長保険期間の短縮
住宅用火災保険商品の最長保険期間を、現在の10年から5年へ短縮する。これはリスク環境の急激な変化に対して、短期間で機動的に対応できるようにするための、今回の最も大きな制度改革のひとつだ。これにより、いわゆる「まとめ払い」の割引メリットは低下することになる(2~5年でも低下)。

③最低免責金額の引き上げ
自然災害以外の事故の増加が収益を悪化させていることを鑑み、「水ぬれ事故」「破損・汚損事故」、および「電気的・機械的事故」については最低免責金額(自己負担額)を引き上げる(概ね3~5万円)。

この金額設定によって保険金支払額を圧縮する効果があるだけでなく、事故の大半を占める少額・軽微な保険金請求を排除することができるため、損害査定、支払い手続きに関わる人件費、事務費、外注費も大幅に削減する効果が見込まれる。

④費用保険金の見直し
事故時に損害保険金とは別に支払われる「費用保険金」についても見直され、自然災害以外の事故を中心に支払い対象から除外される。

⑤保険金の支払い要件の変更
保険金の支払われ方についても大きな変更がある。近年、台風等の自然災害による被害に便乗し、「保険金は使途を問わないので、生活費に充てられる」等の話法に より、保険契約者等に保険金請求を促し、支払われた保険金から高額な手数料を受け取る「特定業者」が急増して おり、大きな社会問題となっている。

保険金請求全体の約2割にも達すると言われるこのような背景を踏まえ、普通保険約款の建物条項を一部改定し「復旧しないことを前提とした保険金請求」を防止するために、保険金支払いに あたり、損害が発生した保険の対象の復旧を必要とする「復旧義務」を、普通保険約款の建物条項に新設する。

建物に関する保険金の支払いにあたり、損害が発生した日から起算して 2 年以内に復旧することが必要となる。この改定により、保険金請求時に、保険の対象を復旧したことが確認できる資料(領収証や復旧箇所の写真等)の提出が 必要となる。

つまり、保険金が原則復旧工事完了後の支払いになるということだ(全損により他の土地に住宅を購入する等の合理的な理由がある場合は、保険会社の承認を得ること で、復旧期間・場所等を変更することができる)。

なお、被保険者が復旧を確約す る「確約書」を提出し、保険会社がその内容を承認した場合は、復旧前に保険金を支払うことも認めるが、復旧を行わない場合は保険会社への通知が必要であり、その場合保険会社は、既に支払った保険金相当額の 返還を被保険者に求めることができるという厳しいものだ。

⑥免責事由の明確化
免責事由に該当する、保険の対象の「経年劣化による損害」や「機能の喪失を伴わない損害」に対する保険金請 求を防止するため、該当する事由の例示を追加し、明確化する。これまで曖昧だった基準についてこれを明確にし、間違った保険金の支払いを防止する。

・不動産賃貸業への影響
損害保険業界は、火災保険の収支の改善にかつてないほど躍起だ。保険料の改定前によく見られる、契約の中途更改・保険期間の長期化(いわゆる「巻き直し」)についても、各保険会社が過度な「駆け込 み契約」を抑制している。収支改善が進まなくなる主な要因の一 つだからだ。

そこまで強行に収支改善を推し進めなければならないほど収支が悪化していることを、賃貸事業者は理解しなければならない。火災保険はここ10年以上も赤字続きのままであり、このままでは公共性の高い相互扶助のシステムが破綻しかねない状況なのだ。

それを改善するための制度改定だとはいえ、比較的火災保険への依存度が高い不動産賃貸業への影響は決して小さくはない。修繕費の先払い、保険金請求の否認など、火災保険に依存し過ぎず、修繕費のための余裕を持った資金繰りを心がける必要があるだろう。


健美家2022/08/10配信より:https://www.kenbiya.com/ar/ns/for_rent/hoken/5900.html?ac=ML