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業界ニュース
2024年05月17日
2024年4月より施行「建築物の省エネ性能表示制度」 - ZEH基準の市場のはじまり 「建築知識の不動産投資ニュース042」
周知のとおり、令和4年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69 号)」により、令和6年4月より住宅・建築物を販売・賃貸する事業者に、省エネ性能ラベルの表示が努力義務となっている。
これにより、今後不動産仲介サイトなどにおいて省エネ性能が表示される物件が増えることになり、それらの性能を基準にした購入、賃貸などの消費行動が加速することが想定される。
制度の始まりにあたって、その内容を改めて確認してみよう。
2024年4月からの制度概要
この制度は令和4年6月に公布された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69 号)」(改正建築物省エネ法)に基づき、令和5年9月に「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」及び太陽光発電設備などの再生可能エネルギー利用設備の建築物への設置を促進する「建築物再生可能エネルギー利用促進区域制度」に関する省令・告示が公布され、併せて両制度のガイドラインとして公表されているものだ。
その内容は、令和6年4月から、建築物の販売・賃貸を行う事業者は、新築建築物の販売・賃貸の際には、告示で定める所定のラベルを用いて省エネ性能を表示することが必要となるものである。
この性能表示制度は「2050年までのカーボンニュートラル実現」という国家目標に向けて、新築の住宅(戸建て、賃貸)のZEH基準化を推進する政策の一つであり、
・建設時のCO2削減
と
・その省エネ性能を基準とした市場づくり
の二つが目指されスローガンとして「誰でも省エネ性能で建物を選べるようにする」と宣言されている。
概要としては、
販売賃貸事業者(売主、貸主、サブリース事業者を含む)は、2024年4月1日以降の建築確認申請を行う新築建築物、および同時期以降に再販売、再賃貸されるその物件について、省エネ性能表示の努力義務を持つ。
その省エネ性能表示は、
1.省エネ性能ラベルと
2.エネルギー消費性能の評価書
の二点をエビデンスとして定められ、それらを発行する方法には自己評価と第三者評価の二つが認められている。
自己評価の場合は、販売・賃貸事業者が自ら住宅性能評価・表示協会のサイトで公開されている省エネ性能ラベル等作成プログラム(自己評価)を利用して、一次エネルギー消費量計算結果(以下「WEBプログラム計算結果(PDF)」)・建物名称、所在地が分かる図書(配置図等)・建物の構造、階数等が分かる図書(平面・立面図等)・面積が分かる図書(求積図等)・設備の種別等が分かる図書(設備機器表・仕様書等)などを入力し利用することになる。
これらの情報は、設計者に確認する必要があるものが多いため、一般には第三者機関(建築確認などを受け付ける評価機関)に依頼して評価を受けることが現実的かもしれない。
ラベルと評価書
「ラベル」には、まず1.エネルギー消費性能が星の数で表示される。最大で6つ、☆一つ当たり国が定めるエネルギー消費量基準から10%の削減量が示される。
星の形でエネルギー消費性能+断熱性能による削減量と、太陽光など再生エネルギーによる削減分とが表示分けされる。前者について-20%減(無印★三つ)が建築物省エネ法の誘導基準となる。
また同じく表示されるのは、2.断熱性能であり、これは全国を8区分した省エネ基準地域区分の該当する区分内で定められた「外皮平均熱貫流率(UA値)」(建物からの熱の逃げやすさ)と「冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)」で評価を行う。評価値4で省エネ基準相当、5が省エネ法の誘導基準になる。
太陽光を考慮しないエネルギー消費性能で★三つ、断熱性能で5段階をクリアすると、チェックボックス「ZEH水準」を示すことができる。
「評価書」においては、さらに詳細に
・物件概要
・評価概要
・ラベル
・エネルギー消費性能の数値(太陽光発電なしの削減率、太陽光発電を含む削減率)
・断熱性能(UA値、ηAC値、地域別評価段階)
・基準の達成状況(省エネ基準、誘導基準)
が示される。
これら、統一された基準によるエネルギー性能の表示により、住宅購入者、賃借者がより良い性能の住宅を選択することができる。
表示制度以後の影響について
制度の初期ということで、現在のところはまだ省エネ性能を表示できる物件はそう多くない。しかしその「多くない」ということは、逆に表示することによってユーザーへの印象訴求がしやすいということでもある。
また同時に、改正省エネ法で同時に公布された内容である「建築物再生可能エネルギー利用促進区域」のことも視野に入れると、自治体との連携においてこれら省エネ性能を評価した物件に対してのアドバンテージが出てくる可能性が高い。
具体的には東京都マンション環境性能表示、大阪府・建築物環境性能表示など、自治体ごとに更にラベリング制度を定めているところがある。
そして、三つ目として大手不動産情報サイトの動向がこの省エネ表示制度に同期していくことである。SUUMO、HOMESといった全国規模の不動産情報サイトがこの表示制度を採用していくことをすでに表明していることからすると、今後物件検索チェックボックスの一つとしてこの評価が表に出てくることは論を待たないだろう。
これを大きな流れとしてそれに向き合い取り組む事業者こそがこれからの時代に優位を占めていく予感がする。
新たな市場を先取りするために、制度と向き合う姿勢が求められている。
引用:2024/05/16 配信より(https://www.kenbiya.com/ar/ns/jiji/architectural_k/7890.html)