所有者不明土地の利用円滑化特措法 所有権取得、探索合理化へ 地域福利増進事業を10年で100件|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

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2018年03月20日

所有者不明土地の利用円滑化特措法 所有権取得、探索合理化へ 地域福利増進事業を10年で100件

政府は3月9日、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」を閣議決定した。
また同法案は同日に今国会に提出された。所有者が不明で利用されていない土地を、公共事
業などの公益的な目的で利用できるようにするもので、所有者の探索を合理化する仕組みも
併せて盛り込んでいる。

同法案の背景には、人口減少や高齢化が進み、土地利用ニーズの低下や地方から都市への人
口移動により地方の土地所有意識が希薄化していることなどから、全国的に所有者の不明な
土地が増加しているという現在の社会的課題がある。16年度地籍調査(今週のことば)によれ
ば、不動産登記上で所有者の所在が確認できない土地、いわば「所有者不明土地の外縁」が
全体の約20%。そして探索しても最終的に所有者の所在が不明な「最狭義の所有者不明土地」
が0.41%となっている。

 しかし、今後相続機会が増えていく中で、この割合は増加の一途をたどることが見込まれ
ている。現在も公共事業の中の用地確保などの際に、所有者特定のために多大なコストと時
間を要し、事業全体の遅れの一因となっているケースも発生している。

最長10年の利用権

 そこで同法案では、所有者不明土地に関わる問題の対策として、3つの分野を柱とした施策
を導入。1つ目は所有者不明土地の円滑利用で、公共事業における収用手続きを合理化。国や
都道府県知事が認定した事業について、都道府県知事が収用委員会に代わり、審理手続きを省
略して権利取得と明け渡しを一本化して裁決できるように定めた。

 また公共事業ではないものの、地域住民などの福祉や利便の増進につながる事業については、
土地の利用権を設定できる「地域福利増進事業」を創設。都道府県知事が事業の公益性を確認
して一定期間公告を行い、上限10年間の利用権を設定できることとした。ただし所有者が現れ
て明け渡しを求めた場合は、期間終了後に原状回復する。異議がない場合には延長も可能。

 2つ目は土地の所有者の探索についての内容で、まず原則として登記簿や住民票、戸籍など、
客観性の高い公的書類を調査対象とすることとし、照会の範囲は親族などに限定する。そして
固定資産課税台帳や地籍調査票など、この探索のために必要な公的情報を行政機関が利用でき
る制度を創設すると共に、長期間相続登記などがされていない土地については、登記官が「長
期相続登記等未了土地」である旨を登記簿に記録できる制度も新たに導入する。

 3つ目は所有者不明土地の適切な管理についての分野だ。民法で財産管理人の選任請求が認め
られているのは利害関係人か検察官に限られるが、同特措法案では「財産管理制度に係る民法の
特例」を設定。所有者不明土地の管理のために特に必要があれば、地方公共団体の長などが家庭
裁判所に対して、財産管理人の選任などを請求可能にする制度を創設する。

 こうした施策を通じた目標として、国土交通省では所有者不明土地の収用手続きに要する期間
を現状の約31カ月から21カ月へと約3分の1短縮する効果と共に、地域福利増進事業における利用
権の設定数については施行後10年間で累計100件を見込む

『住宅新報 2018年3月20日号より』