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業界ニュース

2018年12月25日

18年重大ニュース 新制度続々スタート


 早いもので2018年もあと1週間弱となった。今年は4月に改正宅建業法が施行され、インスペクション(建物状況調査)が重要事項説明項目となったり、安心R住宅制度がスタートするなど、中古流通市場に動きがあった。また、民泊新法も施行され、ヤミ民泊の一掃を図る。しかし、自治体独自の規制が厳しく、順調な船出とは言えないなど、不透明な部分も見られた。更に、西日本豪雨や北海道地震など大きな災害も相次いだ。住宅新報編集部が選んだ「重大ニュース」で18年を振り返った。

インスペ・安心R住宅制度開始 既存住宅流通促進なるか

 改正宅建業法が施行され、4月からインスペクション(建物状況調査)の説明義務化が始まった。

 これは宅建業者が既存建物の取引業務において、媒介契約締結時と重要事項説明時、売買契約締結時にインスペクションの可否やあっせん、結果の提示などを行うことが義務付けられたもの。実際にインスペクションの実施自体が義務化されたわけではない。まずはインスペクションというものの存在や内容を売主と買主、宅建業者に周知していくことを重視し、その先に不動産取引に関わる人々の間にある情報格差を是正していく狙いがある。

 同じく4月には、既存住宅流通の促進を目指した「安心R住宅制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)」も始動。耐震性の確保やインスペクションの実施など一定の要件を満たした既存住宅に対し、国の関与のもとで事業者団体が「安心R住宅」としての標章(ロゴマーク=写真)を付与するものだ。

 12月20日現在では全国の8団体が事業者団体として登録。全国最大の会員数(宅建業者)を擁する全宅連も今秋、本格稼働している。

 国交省が11月27日に公表した実施状況調査によると、9月末時点で広告に同制度の標章が使用されるなどした物件数は482件となっている。

 同制度の利点と課題を見極め、事業者ならびに消費者の理解浸透を図っていけるか。継続に向けた取り組みが求められる。

〝民泊新法〟が6月に施行 厳しい上乗せ規制が足かせ

民泊新法(住宅宿泊事業法)が18年6月15日に施行された。それまでも特区民泊や簡易宿所形態、また、違法な〝ヤミ民泊〟まで運用されていたが、同法の施行によって正式に民泊事業を営めるようになった。民泊事業の届け出は既に1万件を超えている。旅館業法に基づく簡易宿所に比べると3分の1程度の規模だが、今後も増加していくと思われる。

訪日外国人の宿泊施設としての利用の観点に加えて、リノベーションの方法に次ぐ、「空室対策」ともなるからだ。

こうした背景に不動産各社は、オーナーの物件を管理する「住宅宿泊管理業者」としての役割を担うだけでなく、自社物件を活用することで「住宅宿泊事業者」として主体的な取り組みも始めている。

民泊事業で要となるのが住宅宿泊仲介業者で、民泊大手のairbnbのほかにも、ホームアウェイやブッキング・ドットコム、楽天LIFULL STAYなどが宿泊予約サイトを立ち上げて、海外と日本をつなげている。また、日本賃貸住宅管理協会が損害保険ジャパン日本興亜損保と連携し、賠償責任に対応する「民泊保険」を組成するなど、リスク面のカバーも用意され始めている。

民間ベースで盛り上がりを見せる民泊だが、自治体による条例や手続き面で厳しい上乗せ規制があるなど、国内に温度差があるのも実情だ。豪雨災害など外国人旅行者が減るリスクもあり、いまだ絶えない違法民泊の問題もある。

消費税率引き上げへ

10月15日の臨時閣議で安倍晋三内閣総理大臣は予定通り19年10月1日に消費税率を現行の8%から10%に引き上げる方針を表明した。政府では住宅分野について19年10月1日以降の購入などでメリットが出る施策が検討されてきた。

これまで、税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動減への対応について、全国宅地建物取引業協会連合会や全日本不動産協会、全国住宅産業協会、不動産協会、不動産流通経営協会、住宅生産団体連合会などがその対策を求めてきた。内容的には住宅ローン減税やすまい給付金の拡充、省エネ住宅ポイント制度の復活などとなる。更に、住団連は軽減税率を住宅取得に適用することを強く要望している。

12月14日には、自民党と公明党が税制大綱を取りまとめた。消費税率の引き上げ対策における住宅ローンの減税期間は3年間延長の13年間となった。延長期間の11年目以降は、建物価格の2%を3で割った額か、ローン残高の1%のいずれか低いほうの額を控除対象とする。

不明地対策の特措法成立

近年の所有者不明土地の増加を受け、6月に「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が成立。所有者不明で利用されていない土地を公益的な目的で利用できるようにする趣旨の法律で、所有者の探索を合理化する仕組みも盛り込んだ。

同特措法で創設された「地域福利増進事業」は、公共事業に限らず、地域の福祉などにつながる民間の事業についても都道府県知事が土地の利用権を設定できるもの。上限10年ながら、所有者の異議がなければ延長も可能で、不明地の有効利用を促すものとして期待が寄せられている。

免震製品でデータ改ざん

免震構造の建物に使われるオイルダンパーについて、検査工程でのデータ改ざん行為が複数明らかとなった。

まず10月16日、油圧機器メーカー大手のKYB(東京都港区、中島康輔社長)とその子会社が、検査データを書き換えた免震・制振用オイルダンパーを出荷、取り付けていたことを明らかにした。対象となる建物は合計で1102物件、1万3000本超(12月20日現在)に上る。

国交省はこの改ざん行為を受け、免震製品の大臣認定取得事業者に対し、検査工程の調査を指示。それにより、新たに川金ホールディングス(埼玉県川口市、鈴木信吉社長)も子会社によるデータ改ざんを公表した。

建物の耐震性能自体は、建築基準法の定める基準を守っている限り、「震度7程度の揺れでも倒壊しない」(同省)水準。しかし、建物とその利用者の安全に関わる製品の製造過程で、複数のメーカーが不正を行っていたことは、業界の内外に衝撃を与えた。

全国各地で災害相次ぐ

主に夏から秋にかけて地震や台風、豪雨などが相次ぎ、全国各地に大きな被害をもたらした。

6月18日に大阪府北部を震源とする直下型地震が発生。最大震度は6弱で、6人が死亡した。またその中にはブロック塀の崩落により犠牲となった人がいたため、国交省は有識者会議を開催。ブロック塀等の規制を見直した。

また6月末から7月初旬にかけては、西日本を中心に広い範囲で記録的な大雨が降り、「平成30年7月豪雨」と命名された。

9月4日には「非常に強い」勢力の台風21号が上陸。各地で記録的な高潮が観測され、14人が死亡。またこの台風の影響で関西国際空港が一時全面閉鎖し、好調だった訪日外国人観光客数の伸びに冷や水を浴びせる結果となった。

9月6日には北海道胆振(いぶり)地方中東部を震源とし、厚真町で最大震度7を観測する地震が発生した。41人が死亡し、住宅も合計で1万棟以上が被害を受けた。更に道内全域、最大295万戸が停電する事態となり、道内の送電網等の脆弱さが露呈する結果となった。

更に9月30日には、再び「非常に強い」勢力の台風24号が本土に上陸。全国の広い範囲で暴風や大雨が発生し、4人が死亡したほか、住宅へも大きな被害が発生した。

これらのうち、大阪北部地震を除くすべてが「激甚災害」に指定されており、18年度第1次補正予算の大半がこうした災害への対応費用として計上されている。

リバースM型が大幅増 住金機構

今年は住宅金融支援機構が提供している60歳以上向けの住宅ローン「リ・バース60」の利用が大幅に伸びた。1月~10月の申請件数は314件に上り、前年比約4倍のボリュームだ。同ローンは、〝リバースモーゲージ型〟(リバースモーゲージ=今週のことば)であり、毎月の支払いは利息のみで元金は亡くなった時に対象物件を売却することで一括返済する仕組み。件数の急増は、リフォームに限定していた資金用途を、数年前から新築住宅の購入や建設資金にも広げたことが最大の要因。更に昨春からは、相続人に残債務を請求しない「ノンリコース型」を追加したことも後押しとなった。最近では利用の9割がこの「ノンリコース型」。ローンを借りた親が、子供に迷惑をかける心配がないからだ。

利用者の平均年齢は70歳前後だが、資金の用途として最も多いのが新築住宅の取得目的で、全体の7割を占める。こうした新しい資金調達手法が登場したことで、これまで潜在化していたシニア層の新築ニーズが一気に顕在化した格好だ。

マンション価格高止まり

地価上昇や建築費の高騰を受けて、今年も新築分譲マンションの販売価格の高止まりが続いた。首都圏における1月~10月の戸当たり平均価格は5846万円で推移。直近10月には6000万円台に迫り、価格高騰が顕著だった17年の年間平均価格5908万円とほぼ同水準で推移した。供給が東京都心やその周辺区に偏る傾向も続き、億ションの供給も活発で全戸億超えのマンションも多数に上った。一方で、発売戸数の調整はあるものの、契約率も販売好調の目安とされる70%前後で推移し、販売状況も底堅く推移した。

ここ数年、販売価格が高止まりした一方で、平均的な所得水準にある一次取得層の購入できる4000万円未満の価格帯の供給は大幅に縮小。大型のローン減税や贈与税非課税枠の拡大といった支援措置が講じられるものの、ボリュームゾーンである一次取得層向けの価格帯の商品は枯渇状態に近い。所得格差が叫ばれる中、一次取得層の潜在需要を再び喚起できるのかが、来年以降の課題として浮上しそうだ。

かぼちゃの馬車問題 スルガ銀などに波及

 15年1月の税制改正当時、相続税対策などでアパート経営を始める人が急増。管理会社が転貸借する形態では家賃保証などを巡り、「サブリース問題」として注目された。その問題がいまだにくすぶる中、サブリースで女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズがオーナーに賃料を払えなくなった事態が明らかに。その後、スマートデイズは民事再生法の適用を申請したが、東京地裁に認められず、破産となった。そうした中、物件オーナーに融資していたスルガ銀行が、融資の審査書類に改ざんを加えていたことを発表。本来同銀行が融資する場合、自己資金1割を要求していたが、虚偽の売買契約書を作成するなどして、自己資金ゼロで融資するなどの不正を行っていた。

 同銀行は会長、社長など責任者を退任させ、再起を図っているが、19年3月期中間決算では、1000億円の純損失を計上している。

 このほか、タテル(旧インベスターズクラウド)も預金残高の改ざんをしていたことが判明した。

空室率が初の1%台に 旺盛な都心オフィス需要

東京都心5区におけるオフィスビルの空室率の低下が、昨年以上に一段と進んだ。三鬼商事の調査によると、11月時点の平均空室率は1.98%で前月比0.22ポイント、前年同月比1.05ポイントそれぞれ低下した。1%台は、単月調査の発表を始めた02年1月以降初めて。99年の年間平均1.79%に次ぐ水準だ。これと並行して、新規募集賃料は59カ月上昇が続き、継続賃料の値上げ改定も進んだことから、都心部のオフィスビルの賃料水準は更に上昇基調が続いた。

大手企業をはじめとする好調な業績や働き方改革の流れを受けて、法人の借り増し、拡張移転の需要が高まっていることが背景にある。懸念された二次空室についても、概ね短期で入居テナントが決まる状況にある。

中間決算を発表した大手不動産各社からは、企業の旺盛な需要は当面続くとの声が多く聞かれ、来年も空室率は低い水準で推移する見通しだ。

国家資格化へ更に一歩 経営管理士

賃貸不動産経営管理士(経営管理士)は、賃貸不動産経営管理士協議会(原嶋和利会長)が運営する、物件オーナーの賃貸経営をサポートする民間資格だが、18年11月に国土交通省の有識者会議のとりまとめで、「社会的役割の明確化も課題」と明記された。これまでに管理業界を中心に気運を高めてきた「国家資格化」に向けて、更に一歩を踏み出したようだ。

同資格試験の受験者数はここ数年、急増している。18年11月に実施した試験では1万8489人が受験した。受験者数は14年試験で4188人だったため、この4年で5倍近い増加となっている。

経営管理士の資格が注目される理由にはいくつかあるが、最も大きな要因は、18年7月に全面施行された改正「賃貸住宅管理業者登録制度」にある。登録事業者は事務所ごとに経営管理士などの実務経験者を1人以上配置するように義務化された。また、サブリースの際に、貸主に対する重要事項説明と書面交付などの手続きが経営管理士の役割となったことも要因の一つだ。

しかし、こうした義務的な要素ばかりでなく、民泊新法(住宅宿泊事業法)の施行によって住宅宿泊管理業者の資格要件の一つに位置づけられたことで、新たなマーケットを開拓する役割も付与されている。

資格制度をより普及させようと、全国賃貸不動産管理業協会(佐々木正勝会長)が経営管理士講習事業に参入して受講地が拡大するなど、急増する受験希望者の要望に応える体制が広がっている。


本紙18年重大ニュース

(1)インスペクション、安心 R住宅制度開始

(2)民泊新法が施行

(3)消費税率引き上げ予定通り

(4)不明地対策の特措法成立

(5)免震製品でデータ改ざん

(6)全国各地で災害相次ぐ

(7)住金機構、リバースM型大幅増

(8)マンション価格高騰

(9)かぼちゃの馬車問題、更に波及

(10)都心オフィス空室率が初の1%台

(11)経営管理士、国家資格化へ更に一歩

『住宅新報 2018年12月25日号より』