19年基準地価 地方商業地28年ぶり上昇 全国住宅地は下落幅縮小|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

業界ニュース

2019年09月24日

19年基準地価 地方商業地28年ぶり上昇 全国住宅地は下落幅縮小

 国土交通省は9月19日、19年都道府県地価調査(7月1日時点の基準地価)を公表した。同調査によると、三大都市圏以外の地方圏における商業地が前年比0.3%上昇(前年比0.4ポイント増)となり、91年以来28年ぶりに「上昇」へと転じた。全国の地価は全用途平均で同0.4%上昇(同0.3ポイント増)、商業地が同1.7%上昇(同0.6ポイント増)と「上昇」が続き、その上昇幅も大きくなっている。また住宅地は同0.1%下落(同0.2ポイント減)と下落幅が縮小した。(3面に関連記事)

 基準地価は都道府県の発表に合わせ、国交省が取りまとめて公表しているもので、今回の基準地点数は2万1540地点。同省が毎年1月1日時点の地価を調査、公表している地価公示に対し、調査時期や地点などについて補完的な位置付けにある。

 今回の基準地価で全国の住宅地の平均変動率は前年比0.1%下落となったが、3月に公表された地価公示では同0.6%上昇と既にプラスに転じている。この差について国交省地価公示室は、「地価公示と基準地価は一部調査地点が重複しているものの、全体としては異なった地点の地価変動を集計している。基準地価は郡部などが比較的多いため、平均値に差が生じた」と説明している。

全国的に上昇傾向

 都道府県単位で見ると、今回住宅地の地価が「上昇」となったのは15都府県で、神奈川、石川、京都、広島、熊本、大分の6府県が新たに上昇に転じた。これらの府県も主要都市では以前から地価の上昇が見られており、今回はそれ以外の地域にも地価上昇が波及した結果、府県単位での上昇につながった。また同2%以上の「下落」となったのは秋田県のみで、同1県減。

 商業地で新たに「上昇」に転じた都道府県はなく、前年同様の19都道府県。一方、同2%以上の「下落」については、岩手県の下落幅が縮小したため、秋田県のみ(同1県減)となった。また香川県と長崎県については「下落」から「横ばい」に転じている。

 上昇率が最も高かったのは、住宅地(同6.3%上昇)、商業地(同12.0%上昇)共に沖縄県。近年のインバウンド観光拡大を背景に、観光産業を中心とした県内経済の好調が影響した。

 全国的には大都市圏とそれ以外の地域の二極化が継続しており、依然として6~7割の道県は平均して「下落」傾向にある。同時に、「下落」の続く道県の大半で変動幅は縮小傾向にあり、地価の底上げを感じさせる結果となった。

オフィス需要の影響大

 圏域などの範囲で見ると、東名阪の三大都市圏で住宅地・商業地共に上昇幅が拡大したほか、特に〝地方四市〟(札幌、仙台、広島、福岡)の商業地が同10.3%上昇(同1.1ポイント増)と二桁の大きな伸びを見せた。

 同地価公示室は、商業地での地価上昇要因として、インバウンド観光客の増加による商業・宿泊施設開発の活発化、交通インフラの整備、再開発事業の進展に加え、「主要都市におけるオフィス需要の堅調さ」を挙げる。資金調達環境が良好で企業の収益は高水準で推移しており、オフィス環境改善のニーズも高まっていることが背景にあるという分析だ。

東京圏では柏市が躍進

 個別の地点を見ると、変動率が最も高かったのは、18年に続き住宅地・商業地共に北海道虻田郡倶知安(くっちゃん)町。住宅地では1m2当たり6万円(同66.7%増)で、商業地では同7万5000円(同66.7%増)。ニセコ地域へのインバウンド観光客増加による商業、宿泊、住宅等の開発需要は依然として大きい様子だ(2面に関連記事)。

 変動率では倶知安に及ばないものの、前述の通り県単位で最も高い上昇率を示した沖縄県は、変動率上位10位内に住宅地の6地点、商業地の4地点がランクイン。那覇市を中心に、交通・生活利便性の高まっている国頭郡金武(きん)町や中頭郡読谷(よみたん)村などでも地価が大きく上昇しており、広い範囲で土地需要の高まりが続いている様子がうかがえる。

 また東京圏の住宅地で最も上昇率が高かったのは、千葉県柏市大室字正連寺前の「柏ー3」地点で、同11.5%増の同9万800円。つくばエクスプレス(TX)の柏の葉キャンパス駅と柏たなか駅の中間付近に位置する地点で、以前からTX開業に合わせた区画整理が盛んなエリアだ。「都市計画道路も開通するなど、この1年間で開発がかなり進み、住環境も大きく変化した」(同地価公示室)ことが地価上昇につながったと見られる。

 柏市の例に限らず全国的に、住宅地では鉄道をはじめとした交通利便性の状況が地価を左右し、商業地については主要都市中心部の活況や再開発計画が大きな影響を与えるという地価動向が顕著に見られた。


『住宅新報 2019年9月24日号より』