不動産現場での意外な誤解 売買編198 「双方の予約」では双方の完結権行使が必要か?:住宅新報|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

    • HOME » 
    • 業界ニュース » 
    • 住宅新報 » 
    • 不動産現場での意外な誤解 売買編198 「双方の予約」では双方の完結権行使が必要か?:住宅新報

業界ニュース

2023年07月18日

不動産現場での意外な誤解 売買編198 「双方の予約」では双方の完結権行使が必要か?:住宅新報

Q.前回、民法は、予約契約が不安定な契約であるため、予約契約者の一方に予約完結権を付与し、その一方の権利行使だけで本契約が自動的に成立するようにしたということが書いてありました。

A.そのとおりです。「本来の予約」は、予約という契約(合意)のほかに、本契約という契約(合意)を必要とするために、本契約段階で合意が成立せずに契約が流れることがあり、かなり不安定な契約であることから、民法がそのような無駄を省くために、「一方の予約」という規定を置いたということです(民法556条)。

Q.では、その民法が定める「一方の予約」の一方になるためには、どのようにしたらよいのでしょうか。

A.それは予約の当事者が決めることですが、誰を「予約完結権者」にするかは、通常は買主などの資金調達面などで不確定な立場にある当事者がなることが多いのではないでしょうか。もちろん、当事者の話し合いで、売主・買主双方が「予約完結権者」になることもできます。これを「双方の予約」といっています。

Q.その「双方の予約」をした場合、また同様に、双方の完結権行使のタイミングが合わないということもあるのではありませんか。


A.その場合、民法556条の規定を類推適用して、一方だけの権利行使があれば、それだけで本契約が成立すると解されています。

Q.そうすると、「一方の予約」にしろ、「双方の予約」にしろ、予約完結権者が予定どおり権利行使をしなかった際、契約はどうなるのでしょうか。

A.民法556条が「2.前項(予約完結権)の意思表示について期間を定めなかったときは、予約者は、相手方に対し、相当の期間を定めて、その期間内に売買を完結するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、相手方がその期間内に確答をしないときは、売買の一方の予約は、その効力を失う」と定めています。つまり、期間を定めた場合はもちろん、期間を定めなかった場合にも、所定の期間内に権利行使がなかった場合、予約契約そのものがなかったものとされます。その意味からも、予約完結権者に対する権利行使の義務づけ(強制)はできないと解されています。

渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男


『住宅新報 2023年7月18日号(https://www.jutaku-s.com/newsp/id/00000561)より』