本紙22年度売買仲介実績調査 都市部が増収各社の主戦場 高単価市場で稼ぐ構造鮮明に|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

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2023年05月30日

本紙22年度売買仲介実績調査 都市部が増収各社の主戦場 高単価市場で稼ぐ構造鮮明に

主な不動産流通会社の2022年度(22年4月~23年3月)の売買仲介実績が出そろった。本紙アンケート調査を手数料収入で見てみると、前年度に続いて好調な1年だったことを印象付けており、主要37社で手数料収入を増やしたのは29社に上った。ただ、不動産価格の高騰などを受けて取扱件数を増やしたのが13社にとどまった。前年度は取扱件数を増やした会社が8割超を占めていたが、22年度は35%と大幅に縮小し、買い手が及び腰になっていることを浮き彫りにもした。取扱高は28社が増やし、減らしたのは9社だった。平均価格は31社が上昇し、下落は6社のみ。店舗数は14社が増やし、変わらず16社、減少が7社となった。ネットワーク網の構築は、それぞれの成熟度を反映しているとはいえ、数を追う店舗展開からやや距離を置く様子もうかがえる。

都心エリアが好調

価格相場の競り上がりが成約数を伸び悩ませた要因だが、仲介大手トップ3は、手数料収入で過去最高を更新した。三井不動産リアルティグループは、「件数を減らしたものの、取引単価のアップが収益に貢献した」(取締役専務執行役員の正木条氏)。東急リバブルでは取扱件数も伸ばし、手数料収入が前年度に続いて2位と仲介大手の勢力図を塗り替える勢いを見せて三井を猛追する。同社は「リテール(個人)・ホールセール(法人)とも取引が好調。手数料収入に限らず取引件数も過去最高をたたき出した」と話す。住友不動産販売は、「中古マンション取引を中心とした主力の仲介事業で件数を減らしたが、単価の上昇により増収を確保した。営業利益も過去最高を2年連続で過去最高だった」と振り返る。

野村不動産ソリューションズは、富裕層や投資家層へのアプローチも得意とし、「特に都心エリアが好調で、前年比120%超の実績。ホールセールでの取扱高が増えたことも、前年度を超える過去最高の実績を残した要因だ」と胸を張る。同様に富裕層を得意とするリストサザビーズインターナショナルリアルティも、「高額帯の都心やリゾートが大きく貢献し、取扱件数が減る中で増収につなげた」と話す。市場環境について、大和ハウスグループは「新型コロナウイルスによる市況への影響は小さい。営業上の制約がなくなり、首都圏・関西圏とも大きくぶれず価格は上昇傾向にある」とみている。

半面、こうした増収基調の中で、電鉄系3社は手数料収入を減らした。小田急不動産は、「下期から売り物件が増え動きもあったが、第3四半期後半から情報量が減少傾向になった」と分析する。京急不動産は「都内は好調で、業績が伸びなかった横浜以南の店舗業績をカバーしている状態。模様眺めの顧客も多い」と話す。東京カンテイ市場調査部の高橋雅之・主任研究員は「電鉄系は沿線郊外での取引が多く、単価アップの恩恵を受けにくいことを反映している」と指摘する。相鉄不動産販売は手数料・件数・取扱高のいずれも二桁落ち込んだ。

近畿圏を地盤とする事業者を見ると、阪急阪神不動産は、「リテール件数は減らしたが、期末に向けて売買需要が復調し、高額物件の取引もあって手数料は増えた」とする。福屋不動産販売も件数を減らしたが増収となった。近鉄不動産は、件数・手数料とも減少したが、「都心部の単価アップが手数料収入を引き上げている」ことを実感。減収の要因は買取再販事業の手数料を22年度から除外して売買仲介のみを計上したためだ。

活況呈するプロ市場

リテールに限らず法人取引もけん引役だ。前述の三井不リアルの正木氏は、「大型案件が寄与して当社の法人取引としての売り上げも過去最高だった」と話す。大成有楽不動産販売は、「ホールセールの売り上げ増加により、結果として増収となった」といい、みずほ不動産販売は、「高値マーケットを背景に事業法人の拠点を見直し、個人の相談・事業承継に伴う資産処分などの売却案件を、購入意欲おう盛なプロなどが強い価格で取得することが売り上げのけん引役だ」と説明する。信託銀行系3社は増収だった。
三菱地所リアルエステートサービスは「全国的に大型案件の件数が増加して手数料収入に寄与した。レジデンスを中心とした投資用不動産の売買も多かった。空きビルの購入ニーズもあり、ファンドの資産入れ替えが活発化している」と実感する。取引価格は前年度比で2割以上アップしている。阪急阪神不動産は、「ホールセールの件数は増加し、投資家向けの大型案件は活況だ。中小タイプの収益不動産はリーマン・ショック前を上回る高値取引がある」と増収の要因を説明する。中央日土地ソリューションズは、「引き続き業者やプロの不動産投資家の取引を中心に相続や事業承継に伴う不動産取引ニーズが高水準で推移することが見込まれる」と見通す。


『住宅新報 2023年5月30日号より』