ADRの現場から 話し合いでトラブルを解決 50 シェアハウス等ADR総合対策室 スルガ銀行不正融資の解決支援|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

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業界ニュース

2019年01月01日

ADRの現場から 話し合いでトラブルを解決 50 シェアハウス等ADR総合対策室 スルガ銀行不正融資の解決支援


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当協会代表理事 井上徹は、スルガ銀行調停案作成検討委員会の委員長へ就任し、
被害者の事業再生計画の立案や物件再評価等においてスルガ銀行問題に対応中しています。
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【 住宅新報記事 】

裁判によらず、当事者同士の話し合いによってトラブルを解決するADR(裁判外紛争解決手続)。
ADRは裁判に比べて、簡易・低廉・柔軟さをもったトラブル解決が可能になるが、これは消費者のみならず、不動産・建築事業者にとっても有益な制度であるといえる。事業者は当事者同士の板挟みとなり時間と労力を浪費していくケースも多くあるが、ここでADRという話し合いによる具体的な解決策を提案することは非常に前向きなことだ。今回は、法務大臣認証機関である(一社)日本不動産仲裁機構が実施するADRを活用して「スルガ銀行シェアハウス不正融資トラブル」の解決支援を行っている「シェアハウス等ADR総合対策室」を運営するNPO法人日本住宅性能検査協会の大谷昭二理事長から、同トラブル解決の最前線の状況を紹介してもらう。
 19年1月、スルガ銀行シェアハウス不正融資トラブルは新たな局面を迎えています。債務者とスルガ銀行が不動産ADRにおいて調停を実施、和解への道を模索するというケースが出てきているのです。

 現在、NPO法人日本住宅性能検査協会が運営する「シェアハウス等ADR総合対策室」では、シェアハウス、一棟マンション・アパートの投資スキームに対する融資における債務者(物件オーナー)と債権者(スルガ銀行)の「出口の経済的合理性」を検証すると共に、客観的資料(調査報告書)を提供、不動産ADRの活用による当事者間のトラブル解決を支援しています。現状では30人以上の債務者から問い合わせを受けていると共に、その中からADR申立てを受け付け、実際に調停に進んでいます。なお、ADRは(一社)日本不動産仲裁機構が実施し、調停人としてはサブリース建物取扱主任者と投資不動産取引士等がその任を務めています。

 ADRは話し合いによるトラブル解決の手段であり、双方が未来に向かって進んでいくために和解をするというものです。和解の方向性の一例としては、債務者が今後の「事業再生計画」を提示し、スルガ銀行がその計画に理解を示した際は、借入金利の減免や元本の一定期間据え置き等の処置を実施してもらうということが考えられます。

 だからこそ、ここで重要になってくるのが事業再建計画なのです。シェアハウス等ADR総合対策室ではサブリース建物取扱主任者や投資不動産取引士、宅建士、建築士、といった専門家が不動産運用モデルを複数検証して最有効利用となるモデルの抽出を行っています。

 収益予測によってはスルガ銀行の同意の下、継続所有を検討したり、最有効利用となるものにコンバージョンし売却する等、様々な方向性が考えられるでしょう。今後も、この誌上において事業再生計画の事例や進捗等をご紹介できればと考えております。

 ここで一点、債務者の事業再生において問題が浮上していることもご紹介しておきます。それは「被害者債務免除益課税問題」です。例えばADR等の結果として、スルガ銀行が元本一部カットの処置を施した場合、債務者の債務免除益に課税がなされてしまう可能性があるのです。課税所得が1000万円である納税者が8000万円の債務免除を受けた場合は、約1800万円以上にもなるケースもあると推測されています。

 なお、この問題は18年12月7日の「衆議院財務金融委員会」でも質疑応答がなされる等、議論を巻き起こしています。シェアハウス等ADR総合対策室では、引き続き社会的使命感を持って、このトラブルの解決のために尽力していきたいと思います。

『住宅新報 2019年1月1日号より』