ADRの現場から 話し合いでトラブルを解決 59 不動産ADR調停案作成検討委員会 スルガ銀行調停事案説明会を開催|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

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2019年03月13日

ADRの現場から 話し合いでトラブルを解決 59 不動産ADR調停案作成検討委員会 スルガ銀行調停事案説明会を開催

 ADR(裁判外紛争解決手続)は裁判に比べて、簡易・低廉・柔軟さをもったトラブル解決が可能になるが、これは消費者のみならず、不動産・建築事業者にとっても有益な制度であるといえる。今回は、法務大臣認証機関である(一社)日本不動産仲裁機構が実施するADRを活用して「スルガ銀行シェアハウス不正融資トラブル」を解決すべく調停案の策定を行っている「不動産ADR調停案作成検討委員会」が開催した「不動産ADR<スルガ銀行調停事案>説明会」の開催内容を紹介する。

 3月2日、「不動産ADR<スルガ銀行調停事案>説明会・個別相談会」が東京都内で開催されました(写真)。この会では、スルガ銀行シェアハウストラブルにおける債務者やメディア関係者を対象に「不動産ADRを活用してのトラブル解決スキーム」の説明が行われました。

 冒頭、日本不動産仲裁機構の大谷昭二専務理事(日本住宅性能検査協会理事長)より今回のトラブル解決に際して必要なマインドとして「未来志向」があると紹介されました。時間をかけて勝つか負けるか分からない裁判をするよりも、今保有している不動産をいかにして活用して状況を好転させていくかが重要であるということです。そこで必要になるが「事業再生計画」であり、これをもってスルガ銀行とのADRの場につくのです。

 続いて、スルガ銀行に対して行われた行政処分の内容が紹介されました。内容のポイントとしては「スルガ銀行はシェアハウス向けの融資等に対してADRを活用した元本の一部カット等、個々の債務者に対して適切な対応を行うための体制を確立しなければならない」と命令されたということです。加えて、その処分の理由の一例としては、スルガ銀行が同行の融資審査を通すために(1)自己資金のない債務者の預金通帳の改ざん(2)一定年収基準を満たすよう債務者の所得確認資料の改ざん等を行ったと共に、法令等遵守を軽んじ不正行為を蔓延させる企業文化を醸成させたことなどが挙げられました。

 更に、不動産ADRを活用した調停による解決のポイントが不動産ADR調停案作成検討委員会の委員長である井上徹氏(投資不動産流通協会理事長)より紹介されました。先に紹介したように調停の場における有力な交渉の材料が事業再生計画であり、ここでピックアップされたのが計画の根幹をなす「調査報告書」です。

 なお、この報告書は各専門家によって物件の価値や用途、用途別の長期事業収支計画等が盛り込まれた資料となっています。続いて、物件の具体的活用の方向性として(1)個別賃貸(2)社宅(3)ゲストハウス(4)個別オフィス(5)シェアオフィス(6)土地建物売却(7)任意売却等が紹介されました。

 最後に不動産ADRの流れが紹介されましたが、あらためて強調されたのは「不動産ADRに取り組む意義」です。今ある物件を最大限活用すると共にスルガ銀行からの元本一部カット等の処置を受けることは、トラブルを解決するための非常に現実的な手段であり、かつポジティブなものであるということです。参加者の方々は、不動産ADRに多くの可能性を見出すことができたのではないでしょうか。


『住宅新報 2019年3月12日号より』