「空き家」活用についてのヒント:ストック活用の動向「不動産投資家のための建築知識005」|健美家|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

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業界ニュース

2021年04月13日

「空き家」活用についてのヒント:ストック活用の動向「不動産投資家のための建築知識005」

今回は、昨今一般のニュースでも話題になることの多い「空き家」に関連して背景にある「ストック活用」の考え方と最近の流れを説明しよう。前回解説した「転用」の考え方もこのストック活用の考え方を理解することで、より関心が持てるだろう。


「建築のストック」とは。既存の建築はすべて「ストック」である


財務の基本表としての損益計算書はフロー増減の状況を、貸借対照表はストック資産の状況を表すということになぞらえて、国交省周辺から既存の建築物、土木構造物、国土環境を「ストック」と呼ぶようになってきている。

「すでにある=既存の」空間・構造・環境の資産という意味であり、スクラップアンドビルドで発展してきた、戦後の建設産業がフロー的成長を焦点としてきたことからの転換を表すワードだ。

その考え方の上に「ストックをプラス」に変えるための政策も多く動き出している。


・既存住宅の建物評価手法の改善の一つとしてのインスペクション制度

・国の関与のもとで消費者が安心して購入できる物件に対し標章を付与する「安心R住宅」制度の取り組み

・全国版空き家・空き地バンクの構築等


などが行われているが、それらの背景にあるストック活用の視点はそのまま不動産のマネジメントビジネスにつながっていく。この「ストック」として既存の建築物を考える視点は、既存の建築物、土地の活用によって価値を生み出すことを目的とした現在の不動産の世界の基礎でもあるといえるだろう。政策による追い風制度を利用することは、ビジネスでありながら、同時に社会的な貢献ともなるのだ。

なにより、市場で扱われる量が多くなれば多くなるほど物件評価は安定していく。リスクを避けるという意味では、インスペクションレポートによる第三者情報の取得や、第二回記事に解説した必須ドキュメントの確認、前々回の瑕疵チェックなどを踏まえて各自が情報を判断することに留意したい。

そのうえで、ストック活用という大きな方向性は今後も既存建築物の数が増える中で重要になっていくこと、不動産投資においてもその視点を持っていくことが事業の持続化にプラスになるだろうことは忘れずにいたい。


「空き家」ポータルサイトの読み方。マイナスをプラスに転化するヒントとして


一方で活用されない「ストック」はある種のマイナスの価値評価となる。それが「空き家」問題の根本だ。2015年5月26日に「空家等対策特別措置法」が施行され、これにより、「建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む)」を法律上も正式に「空き家」として位置づけ、その中でも


・倒壊など著しく保安上危険となる恐れがある

・著しく衛生上有害となる恐れがある

・適切な管理がされていないことによって著しく景観を損なっている

・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である


などのものを「特定空き家」と位置付けて、地方自治体が勧告、命令指導を行い、状況によっては過料や行政代執行の手段を取って対処することができるようになった。

これらは、いわば管理も使用もされない「マイナスのストック」を減らす政策だ。


ここで、全国版の空き家バンクをクリックして見てみると、各地域でリストアップされた空き家が並び、また囲み記事として、活用事例が掲載されている。相談先などの案内も含め、一通りの空き家活用のポータルになりつつある。

値段だけ見ると地方では驚くような価格で戸建て住宅が取得できることがわかるが、一方で、やはりここでの空き家自体には一般市場に出ないなりの「商品以前」の理由があるのだ。

それゆえ取得判断には建築や不動産、事業についての知識は必須になる。活用事例についての記事やコラムはそのためにどういう知識が必要かに関してのヒントになるものとして読むことができるだろう。

物件として多いのは、やはり地域マーケットとその物件がそぐわないためによる「空き家」であり、物件と敷地だけ考えていてもその不一致のハードルは超えられない。

そのエリアが真に必要とする利用法は何か、それを実現するために何が必要なのか、それを利用するユーザーはどこにいるのかを順番に組み立てていく考え方が必要だ。

エリアの動向を読み込むことから始まり、ニーズに合わせた使用法を可能にしたうえで市場に提案していく「方法」としての「転用」については、前回解説したように、空き家物件に対しても同じ考え方が適用できるだろう。

同様に、リフォーム・リノベーションによる価値向上の考え方も活用においては大事なレバレッジにつながる投資として考えられるだろう。

資金と物件そしてマーケットの三要素をバランスさせて計画することが、不動産投資における基本戦略であり、何を武器とするかの判断基準でもある。

「空き家」というマイナスのストックにおいては、逆に「何かを変える」という発想こそが必要だ。何を変えることが「プラス」への転化につながるのかの発想法のヒントが見つけられれば、一般の不動産投資においても有用な考え方を得ることだろう。

2021/4/9 健美家より https://www.kenbiya.com/ar/ns/jiji/architectural_k/4555.html