コロナ禍で実物不動産投資に足踏み、小口化1万円~100万円単位じわり人気|健美家|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

業界ニュース

2020年07月29日

コロナ禍で実物不動産投資に足踏み、小口化1万円~100万円単位じわり人気

2012年12月からの景気拡大局面が終わった。内閣府は7月22日に景気が後退に転じたことを正式に認定する見通しだと発表した。景気の山は2018年10月にするのが有力とされ、景気拡大期間は71カ月で戦後最長の「いざなみ景気」(73カ月)を超えない。

日銀よる大規模金融緩和や2020年東京五輪・パラリンピックを追い風に景気拡大トレンドを描いてきたが、米中関係悪化や消費税率8%から10%への引き上げに加え、新型コロナウイルスの世界的な大流行が景気押し下げの決定打となった。

コロナ禍にあっても堅調に推移している株式市場は世界的な財政出動を背景にしたマネーゲームの賜物で実体経済との乖離は鮮明だ。

今後、景気の後退とともに不動産市場にも影響を及ぼす可能性が高い。不動産は遅効性の強いマーケットであるだけに不動産個人投資家はいまから次の一手を考えておく必要がありそうだ。


その一つとして、最近注目を浴びているのが不動産の小口化商品である。実物の不動産の売買取引に足踏みする中で、投資先不動産を小口化したものに資金を振り向ける。

ビル一棟、マンション一棟を購入して賃貸運用しようとすると、莫大な資金調達力が必要だ。小口化により投資しやすくなる。

莫大なお金を動かせる人は、はっきり言ってごく少数だ。数十億円、数百億円単位のオフィスビルや商業施設などに投資する方法として、Jリート(不動産投資信託)が一つの方法として挙げられる。

複数の投資家から集めた資金などを使って投資法人が運用物件を購入し、その賃料収入などを原資に投資家に分配金を配る仕組みの商品だ。

しかし、一般の株式市場と同様に購入した際の株価(投資口価格)が大幅に値下がりすれば、配当金を得られてもその損失額(含み損)は大きい。その株価というのは、不動産市場や経済状況のファンダメンタルズ(基礎的条件)だけで動くわけではなく、さまざまな思惑などから形成されている。

また、東証リート指数を見ると、新型コロナ前までは日経平均やTOPIXよりも高いパフォーマンスを示していたこともあって、その後の騰落率を見ると、東証リート指数の谷が最も深くなっている。

Jリートの投資家層は、地方銀行や外国法人といった機関投資家の比率が高いために、それら機関投資家の動きを反映していると言える。一般的に機関投資家はロスカットルールを採用する。これは株価が一定の割合下落すると、自動的に投資銘柄を売却するもので地銀などが採用している。

つまり、個人ではどうしようもできない特定の機関投資家に引きずられてしまうことが多い。個人では手の届かない最新のインテリジェントビルなどを運用できるという魅力はあるものの、投資リスクは株式投資とそう変わらなくなっている。


◎商品はマンションからオフィスまで多様化

もう一つの小口化は不動産特定事業法に基づいての投資商品である。もちろん景気動向によって、不動産価格と賃料の変動はあるものの、Jリートのような株価のボラティリティ(変動幅)によって運用成績が大きくぶれるリスクは小さい。

例えば、不動産テックのGAテクノロジーズは、都心の中古マンションに特化して1万円から投資できるクラウドファンディング型の商品を提供している。直近7月26日に申し込みを締め切った東京・目黒の築18年のマンションを対象とした第18号ファンドは、入居者からの賃料収入によるインカムゲインと物件の売却から得られるキャピタルゲインの両方の配当が受け取れる商品設計としている。運用期間3カ月で年利4%となっている。

不動産投資家向けにマンション開発・販売を展開する明光トレーディング(東京都渋谷区)も、年内にクラウドファンディングでの小口化商品の提供に参入する予定だ。

2019年3月に不動産特定共同事業の許可を取得しており、コロナ禍で実行が遅れているものの、東京都心の区分マンションを対象に1口10万円の出資単位で1年間運用できる商品を検討している。

同社の松木正一郎社長は、「将来的には区分にとどまらず、1棟単位での小口化を目指している」と述べ、人生100年時代の資産形成に若いサラリーマンなどの投資リテラシーを育む一助になればともいう。

マンションに限らない。オフィスビルを区分ごとに切り分けて小口化して販売する商品もある。その草分け的な存在であるボルテックス(東京都千代田区)の場合を見ると、直近2月に1990年築の地上6階地下1階建て延べ947㎡のビルを小口化。

1口100万円5口以上の出資単位で280口を募集した。運用期間は10年間で設定。賃料相当額を分配金として受け取れるほか、同社では、不動産の実勢価格と相続税評価額の差額を生かしての税負担を軽減や相続・贈与対策としての活用が多いとしている。


◎寝かした資金の運用先に

将来が見通しづらい中でリスクを推し量ることは難しい。経済ジャーナリストの萩原博子氏は、著書「萩原博子の貯まる家計」(毎日新聞出版)の中で「短期で運用するよりも、長期で運用するほうがリスクが小さくなるなどということはありえない。そんな〝嘘〟を、金融庁が、堂々とホームページに書いているのはおかしいと思います」と書いている。

数カ月先の自分が見通せない時代に、数十年後を想定しての投資の難しさを指摘し、「投資のプロは3カ月先しか見てない」としている。

そうであれば、足もと動かないのが最も安全パイではあるが、一方で手元資金を銀行に預けたところで利息が付かずに寝かしたままでは口惜しい。なかには運用期間が10年単位もあるが、たいていの不動産の小口化商品を見ると、3カ月や6カ月、長くても1年間の運用期間で途中解約が可能な商品も少なくない。

不透明感から長期運用リスクを取りたくない場合の資金預け先として位置付けてもよさそうだ。



『健美家ニュース 2020年7月9日より』

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