国交省概算要求 老朽マンション再生を推進 建て替え支援で新規予算20億円 不動産市場整備費は2倍超|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

    • HOME » 
    • 業界ニュース » 
    • 住宅新報 » 
    • 国交省概算要求 老朽マンション再生を推進 建て替え支援で新規予算20億円 不動産市場整備費は2倍超

業界ニュース

2019年09月03日

国交省概算要求 老朽マンション再生を推進 建て替え支援で新規予算20億円 不動産市場整備費は2倍超

 国土交通省は8月28日、20年度予算概算要求をまとめ、公表した。総額は前年度比1.18倍となる7兆101億円で、09年夏に公表した10年度概算要求以来10年ぶりに7兆円超を要求。全体としては、近年頻発化・激甚化する自然災害に対応するための「防災・減災、国土強じん化」を大きな柱の一つに据える。住宅・不動産関連では、マンションの老朽化対策や不動産市場におけるESG投資への対応について新規予算を要求。また中小不動産業者へ支援、地方の不動産情報の発信・活用、住宅セーフティネット強化、木造住宅生産体制整備などについても新たな事業の予算を求めた。(併せて公表された国交省税制改正要望)

 今回の予算概算要求では、マンションの再生促進と管理適正化に向けた予算の新規要求や拡充が見られた。国内のマンションストックが増加を続ける中、国交省が高経年マンションへの対策を重視している様子がうかがえる。

 まず「老朽化マンション再生モデル事業」として、新たに20億円を求めた。老朽化したマンションの建て替え、または長寿命化を図る改修について、モデルとなる事業を支援する。またマンション管理の実態調査を進め、自治体が行う管理適正化とマンション再生の取り組みを支援する事業の予算を大幅に拡大し、前年度比2.25倍の2億7500万円を要求している。

 管理業については、賃貸管理の分野でも予算拡充を図る。近年はサブリース関連をはじめ、賃貸住宅にかかわるトラブルが大きな社会問題となっており、7月には同省が賃貸管理業者への大規模な実態調査に乗り出している。そこで、賃貸管理業のルール強化や登録制度の活用促進などを目的とした「賃貸管理業の制度の適正化に係る環境整備」に5000万円(同3.57倍)へと増やした。

ESG対応に注力

 「不動産市場の環境整備」分野にも力を入れており、要求額は同2.33倍の4億6000万円。不動産投資の活性化を中心に、幅広い項目で予算の増額や新規獲得を図る。

 まず、近年世界的に注目度の高まっているESGへの対応について、新たに6000万円を要求した。ESG不動産投資における情報開示のガイダンス作成や、不動産のESG要素評価の仕組みを作成し、不動産鑑定評価基準等への反映を目指すなど、国としてのESG不動産投資の枠組みを構築し、投資市場の環境整備を行っていく方針だ。

 また暗号資産(仮想通貨)やトークン(今週のことば)などの新技術も踏まえ、不動産証券化手法による投資の促進のために7000万円(同2.33倍)を計上した。

 更に地域の不動産業の持続的発展を目指し、新たな施策の具体化を目指す。4月に策定された「不動産業ビジョン2030」を踏まえ、中小不動産業者のAIやIoT等の新技術導入や人材育成、事業承継などを促進・支援するための新規事業予算として3000万円を要求した。


ストック活用支援を拡大

 人口減少の進行を受け、不動産ストックの利活用や流通活性化についても引き続き力を入れる。「空き家対策総合支援事業」の予算規模を同1.52倍の50億円へと大幅に引き上げる。また個別の事業では、「空き家等の流通・活用促進」は6000万円(同1.40倍)、「所有者不明土地法の円滑な運用支援」は9000万円(同1.67倍)、「ランドバンク活用等土地の適切な利用・管理の推進」は7000万円(同1.94倍)など、既存事業もそれぞれ拡大を図る。

 更に「不動産情報インフラ整備」分野でも、「地方への投資促進に向けた地価情報の発信強化」に4000万円、「官民連携による地域の不動産情報の活用促進」に3000万円を新たに要求。不動産情報へのアクセス環境を整え、流通活性化を促す狙いがうかがえる。

建築物や市街地の質的向上へ

 住宅の確保や居住の安定化に関しても、事業の創設や拡大が見受けられる。「地域居住機能再生推進事業」は513億8600万円(同1.75倍)。公的賃貸住宅の建て替え・改修のほか、住宅金融支援機構や地方自治体とも連携し、若年層や子育て世代が安心して暮らせる住環境の整備を充実化させる。

SN住宅や木造建築推進

 新規事業では、「共生社会実現に向けた住宅セーフティネット機能強化・推進事業」として15億1200万円を要求。高齢者や障害者など住宅確保要配慮者の居住の安定確保へ向け、住宅セーフティネット法に基づく賃貸住宅の改修や居住支援協議会等の活動への支援を行う。

 加えて、住宅・建築物の質的向上の後押しも図る。木造建築の推進に向けては、「木造住宅・都市木造建築物における生産体制整備」に5億9000万円の新規予算を盛り込んだ。また5月に成立、交付された改正建築物省エネ法を踏まえた「省エネ住宅・建築物の整備に向けた体制整備」は、同1.31倍の8億円を求めた。

回遊促す街づくり

 都市政策の分野を見ると、「居心地がよく歩きたくなるまちなか」の実現に向けた新規事業が筆頭に挙がる。

 民間企業と連携し、歩行者の目線を取り入れた公共空間の創出を図るため、「まちなか景観資源活用促進事業」に20億円、「まちなかリノベーション推進事業」に1億5000万円の新規予算をそれぞれ要求している。

 そのほか、「官民連携まちなか再生推進事業」でも新規に7億円を求め、コミュニティ活性化や地域持続性の向上へ向け、既存事業の予算拡充を図っている。

 なお「すまい給付金」など、10月に予定されている消費税増税に伴う住宅取得時の給付措置については、予算編成の過程で検討するとした。

『住宅新報 2019年9月3日号より』