お盆休みも終わり、政権与党である自由民主党でも、20年度の概算要求(各省庁が財務省に対して行う歳入歳出予算の見積もり)と税制改正要望に向けた会議が連日開かれている。住宅・不動産関連団体では、国土交通省に20年度の税制改正要望を提出している。各団体はどのような要望を行っているのか。
19年度の各団体の税制改正要望では、消費税率10%増税に伴う駆け込み、反動減対策で、結果的には満額回答といえる成果だった。20年度は、そうした大きな柱ともいうべき存在はないが、各団体の特色ある要望がなされている。
まず、期限切れ措置の延長要望項目を見ていくと、ほとんどの団体で要望しているのが、「新築住宅に係る固定資産税の軽減特例の延長」だ。新築住宅を取得した場合、住宅に係る固定資産税については、一般の住宅については3年間、中高層住宅では5年間税額が半分になる。この特例の適用期限が20年の3月いっぱいで切れるので、その延長の要望を各団体とも第一に取り上げている。全国住宅産業協会(馬場研治会長)では、「半世紀を超えて措置されている特例措置」であり、「本来は恒久化すべき」としている。
このほか、「住宅用家屋の所有権保存登記等に係る登録免許税の特例措置」「新築住宅用土地などに係る不動産取得税の各種特例」「買取再販における住宅の取得に係る登録免許税の特例措置の延長」などを要望している。
では、各団体の要望を個別に見てみよう。
不動産協会(菰田正信理事長)では、税制改正の要望項目として、「設備投資の促進による成長力強化に不可欠な重要税制」「期限切れ重点要望項目」「時代を先取る魅力的なまちづくり・都市再生の推進税制」「豊かな住生活を実現するための税制」「不動産事業等の推進に不可欠な税制」を挙げた。
このうち、「設備投資の促進による成長力強化に不可欠な重要税制」では、都市、地方の不動産ストックの有効活用を図るため、事業用資産の買換え特例の延長と敷地面積要件の緩和の拡充を求めた。 また、大都市の国際競争力を強化し、国際的なビジネス環境を整備するために、まちづくりや都市再生を推進する税制項目を示した。具体的には、「時代を先取る魅力的なまちづくり・都市再生の推進税制」として、国家戦略特区に係る特例の延長、木造密集地域の解消など再開発促進に向けた新たな仕組みの創設などを盛り込んだ。
不動産流通経営協会(FRK・山代裕彦理事長)は、新築住宅の供給促進と既存住宅の活用を車の両輪として施策を講じていくため、前記した「新築住宅に係る固定資産税の軽減特例」や「新築住宅用土地などに係る不動産取得税の各種特例」の適用期限の延長などを要望している。
また、既存住宅に関しては、既存住宅における住宅ローン減税の最大控除額の300万円への引き上げ(現行200万円)や築年数要件の緩和のほか、固定資産税の軽減特例を既存住宅においても適用することなどを拡充要望としている。また、若年層、高齢者層共に「広さ」にこだわらない持ち家志向者が一定割合を占める現状を踏まえ、各種特例等の適用要件である最低床面積要件を現在の50m2から40m2に引き下げることも求めている。
全国住宅産業協会は、今年度末で適用期限が切れる軽減措置の延長要望を中心としつつ、住宅税制の抜本的な検討、ストックの有効活用を促す新たな措置創設も求めている。
具体的には耐震改修やバリアフリー改修、省エネ改修などを行った住宅への減額措置である「既存住宅に係る固定資産税の特例措置の延長」のほか、「認定長期優良住宅に係る特例措置の延長」「認定低炭素住宅に係る登録免許税の特例措置の延長」を要望。
また、「住宅ローン減税等の床面積要件(現行50m2以上)の緩和」も求めた。具体的な要望面積は明記していないが、ファミリータイプと同質の居住性能を有する都心居住に適した小規模なマンション取得にも支援が必要としている。
更に、被相続人が居住していた住宅を同居していた相続人が相続した場合には、その住宅と敷地について相続税を非課税または徴収猶予とする制度創設を提案している。これは、相続対策の一環として敷地の一部または全部売却により、細分化や不整形化が進行し、居住環境悪化の事例が見られるため。良好な街並み維持を図る観点からこうした制度創設が必要としている。
全日本不動産協会(原嶋和利理事長)は、空き家、所有者不明土地、未利用空地の流通促進を図る政策要望と共に、地方活性化を図る税制改正を要望している。
具体的には、低廉な物件等に限定した長期譲渡所得における100万円特別控除制度の復活、固定資産税の課税標準方法の見直し、低額物件等の相続登記における登録免許税の特例措置(期限付き廃止)など。また、「一定の住宅用家屋・土地購入における抵当権設定時の登録免許税廃止」「家屋の床面積(50m2以上)の引き下げ」「築年数要件の廃止」など住宅ローン控除等における要件緩和を求めている。
更に、既存住宅流通活性化のために「安心R住宅」と一体となった既存住宅ローンやインスペクションした住宅に対する積極的な融資優遇措置の創設などのほか、印紙税・登録免許税の定額制導入による見直しなどを要望している。住宅優遇措置の適用期限を迎える項目については延長要望とした。なお、同協会の要望については、確定版ではないため、修正される可能性がある。
マンション管理業協会(岡本潮理事長)は、修繕や積立金の状況などマンション管理の状況が流通市場などで適正に評価される管理情報開示の仕組みづくりを柱に、適正管理のための要望を掲げている。マンションの永住志向が高まり続ける一方で、居住者の高齢化、修繕積立金不足や役員のなり手不足といった管理組合運営や計画的な修繕の実施も難しさが増している。
それを踏まえ適時適切な修繕を実現するため、区分所有者が管理組合に納入する管理費、修繕積立金の負担を軽減するとして、管理組合資金の確保に資する税制優遇などの制度創設またはこれに相応する措置の検討を要望した。『住宅新報 2019年8月27日号より』
お盆休みも終わり、政権与党である自由民主党でも、20年度の概算要求(各省庁が財務省に対して行う歳入歳出予算の見積もり)と税制改正要望に向けた会議が連日開かれている。住宅・不動産関連団体では、国土交通省に20年度の税制改正要望を提出している。各団体はどのような要望を行っているのか。
19年度の各団体の税制改正要望では、消費税率10%増税に伴う駆け込み、反動減対策で、結果的には満額回答といえる成果だった。20年度は、そうした大きな柱ともいうべき存在はないが、各団体の特色ある要望がなされている。
まず、期限切れ措置の延長要望項目を見ていくと、ほとんどの団体で要望しているのが、「新築住宅に係る固定資産税の軽減特例の延長」だ。新築住宅を取得した場合、住宅に係る固定資産税については、一般の住宅については3年間、中高層住宅では5年間税額が半分になる。この特例の適用期限が20年の3月いっぱいで切れるので、その延長の要望を各団体とも第一に取り上げている。全国住宅産業協会(馬場研治会長)では、「半世紀を超えて措置されている特例措置」であり、「本来は恒久化すべき」としている。
このほか、「住宅用家屋の所有権保存登記等に係る登録免許税の特例措置」「新築住宅用土地などに係る不動産取得税の各種特例」「買取再販における住宅の取得に係る登録免許税の特例措置の延長」などを要望している。
では、各団体の要望を個別に見てみよう。
ストック活用を
不動産協会(菰田正信理事長)では、税制改正の要望項目として、「設備投資の促進による成長力強化に不可欠な重要税制」「期限切れ重点要望項目」「時代を先取る魅力的なまちづくり・都市再生の推進税制」「豊かな住生活を実現するための税制」「不動産事業等の推進に不可欠な税制」を挙げた。
このうち、「設備投資の促進による成長力強化に不可欠な重要税制」では、都市、地方の不動産ストックの有効活用を図るため、事業用資産の買換え特例の延長と敷地面積要件の緩和の拡充を求めた。 また、大都市の国際競争力を強化し、国際的なビジネス環境を整備するために、まちづくりや都市再生を推進する税制項目を示した。具体的には、「時代を先取る魅力的なまちづくり・都市再生の推進税制」として、国家戦略特区に係る特例の延長、木造密集地域の解消など再開発促進に向けた新たな仕組みの創設などを盛り込んだ。
既存住宅にも固定資産税特例
不動産流通経営協会(FRK・山代裕彦理事長)は、新築住宅の供給促進と既存住宅の活用を車の両輪として施策を講じていくため、前記した「新築住宅に係る固定資産税の軽減特例」や「新築住宅用土地などに係る不動産取得税の各種特例」の適用期限の延長などを要望している。
また、既存住宅に関しては、既存住宅における住宅ローン減税の最大控除額の300万円への引き上げ(現行200万円)や築年数要件の緩和のほか、固定資産税の軽減特例を既存住宅においても適用することなどを拡充要望としている。また、若年層、高齢者層共に「広さ」にこだわらない持ち家志向者が一定割合を占める現状を踏まえ、各種特例等の適用要件である最低床面積要件を現在の50m2から40m2に引き下げることも求めている。
良好な街並みを
全国住宅産業協会は、今年度末で適用期限が切れる軽減措置の延長要望を中心としつつ、住宅税制の抜本的な検討、ストックの有効活用を促す新たな措置創設も求めている。
具体的には耐震改修やバリアフリー改修、省エネ改修などを行った住宅への減額措置である「既存住宅に係る固定資産税の特例措置の延長」のほか、「認定長期優良住宅に係る特例措置の延長」「認定低炭素住宅に係る登録免許税の特例措置の延長」を要望。
また、「住宅ローン減税等の床面積要件(現行50m2以上)の緩和」も求めた。具体的な要望面積は明記していないが、ファミリータイプと同質の居住性能を有する都心居住に適した小規模なマンション取得にも支援が必要としている。
更に、被相続人が居住していた住宅を同居していた相続人が相続した場合には、その住宅と敷地について相続税を非課税または徴収猶予とする制度創設を提案している。これは、相続対策の一環として敷地の一部または全部売却により、細分化や不整形化が進行し、居住環境悪化の事例が見られるため。良好な街並み維持を図る観点からこうした制度創設が必要としている。
地方活性化を
全日本不動産協会(原嶋和利理事長)は、空き家、所有者不明土地、未利用空地の流通促進を図る政策要望と共に、地方活性化を図る税制改正を要望している。
具体的には、低廉な物件等に限定した長期譲渡所得における100万円特別控除制度の復活、固定資産税の課税標準方法の見直し、低額物件等の相続登記における登録免許税の特例措置(期限付き廃止)など。また、「一定の住宅用家屋・土地購入における抵当権設定時の登録免許税廃止」「家屋の床面積(50m2以上)の引き下げ」「築年数要件の廃止」など住宅ローン控除等における要件緩和を求めている。
更に、既存住宅流通活性化のために「安心R住宅」と一体となった既存住宅ローンやインスペクションした住宅に対する積極的な融資優遇措置の創設などのほか、印紙税・登録免許税の定額制導入による見直しなどを要望している。住宅優遇措置の適用期限を迎える項目については延長要望とした。なお、同協会の要望については、確定版ではないため、修正される可能性がある。
適正管理を推進
マンション管理業協会(岡本潮理事長)は、修繕や積立金の状況などマンション管理の状況が流通市場などで適正に評価される管理情報開示の仕組みづくりを柱に、適正管理のための要望を掲げている。マンションの永住志向が高まり続ける一方で、居住者の高齢化、修繕積立金不足や役員のなり手不足といった管理組合運営や計画的な修繕の実施も難しさが増している。
それを踏まえ適時適切な修繕を実現するため、区分所有者が管理組合に納入する管理費、修繕積立金の負担を軽減するとして、管理組合資金の確保に資する税制優遇などの制度創設またはこれに相応する措置の検討を要望した。
『住宅新報 2019年8月27日号より』