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業界ニュース

2019年04月10日

ADRの現場から 話し合いでトラブルを解決 63 シェアハウス等ADR総合対策室 スルガ銀行・レオパレス21の両事案に対応

 ADR(裁判外紛争解決手続)は裁判に比べて、簡易・低廉・柔軟さをもったトラブル解決が可能になるが、これは消費者のみならず、不動産・建築事業者にとっても有益な制度である。今回は、「シェアハウス等ADR総合対策室」を運営するNPO法人日本住宅性能検査協会の大谷昭二理事長から、「スルガ銀行シェアハウス不正融資トラブル」に係る不動産ADRによる支援内容を紹介してもらう。

 「シェアハウス等ADR総合対策室」では、以前より不動産ADRを活用した「スルガ銀行シェアハウス不正融資トラブル」解決支援に取り組んできました。これはスルガ銀行と債務者(オーナー)間のトラブルを不動産ADRによる話し合い(調停)で解決するというものですが、加えて現在では「レオパレス21サブリーストラブル」についても不動産ADRを活用した解決支援に取り組んでいます。

 レオパレス21の事案に関する支援内容としては、レオパレス21による「施工不良問題」や「家賃減額請求等のサブリーストラブル」の影響でローンの支払いが困難になったオーナーと融資金融機関の間で不動産ADRを実施し、「金利減免」や「リスケ」等の施策を実施してもらうようにするというものです。これは、スルガ銀行シェアハウストラブルにおいて不動産ADRが目指すものと同じです。

 この2つの不動産ADRに共通している考え方は「未来志向」です。オーナーが保有している資産をどのように活用していかに状況をよい方向に変えるかということがポイントなのです。そこで大事になってくるのが「事業再生計画」です。

 不動産ADRの実施にあたっては、まず保有物件について複数の不動産運用モデルを複数検証・調査します、最有効利用となるモデルを調査します。各モデルの収益予測および物件価値を検証し、実勢売買価格調査・不動産鑑定評価・金融資産調査など多岐に渡る項目について調査し、収益予測および物件価値を検証した上での調査報告書を作成し、その報告書を基に調停案作成基礎資料の「事業再生計画」を作成します。これによって、金融機関に対してオーナーの姿勢や具体的な事業プランを説明するのです。

 なお、不動産運用モデル例としては、(1)通常賃貸としての運用(個別賃貸)(2)事業用賃貸としての運用(一棟借上げ:ゲストハウス、社宅)(3)事業用賃貸としての運用(個別オフィス)(4)事業用賃貸としての運用(シェアオフィス)(5)土地・建物売却について(実勢売買価格査定)(6)シェアハウス等があります。

 また、事業再生計画にある収益予測によっては、債権者である金融機関の同意の下、(1)継続所有等の検討(2)最有効利用となるものにコンバージョンし売却の検討(3)任意売却の検討等、あらゆる選択肢からの検討を行います。

 オーナーが置かれている状況がいかに厳しくとも、決して未来を諦めず、前に進んでいくためには金融機関の協力を得ることが不可欠であり、これを可能にするのが不動産ADRなのです。結果として、トラブル前よりも収益を上げられるようになるケースも発生してくることでしょう。スルガ銀行やレオパレス21に関する事案以外であっても同様のスキームが考えられるため、今後様々な場面で金融機関とオーナー間における不動産ADRが実施されていくことでしょう。

 ●「シェアハウス等ADR総合対策室」(運営団体 NPO法人日本住宅性能検査協会) 電話03(3524)7124

『住宅新報 2019年4月9日号より』