裁判によらず、当事者同士の話し合いによってトラブルを解決するADR(裁判外紛争解決手続)。裁判に比べて、簡易・低廉・柔軟さをもったトラブル解決が可能になるが、これは消費者だけでなく、不動産・建築事業者にとっても有益な制度である。事業者は当事者同士の板挟みとなり時間と労力を浪費していくケースも多くあるが、ここでADRという話し合いによる具体的な解決策を提案することは非常に前向きなことだ。今回は、法務大臣認証ADR機関である日本不動産仲裁機構が、インスペクションとトラブルの関係について紹介する。
国策として取り組みが行われている中古住宅流通の活性化ですが、物件売買においては少なからずトラブルが発生しています。そこで、トラブルをできるだけ未然に防ぐために制度化されたのが改正宅地建物取引業法における「中古住宅取引の際のホームインスペクション(住宅診断)の説明義務化」です。ここでは、ホームインスペクションを実施することによってトラブルが解決したという2つの事例を紹介します。
東京都内の築20年の戸建住宅を一般の売主より購入したA氏。購入から半年後、ベランダ表面部分に劣化が見られたため、防水のリフォームを業者に依頼したところ、ベランダ内部の腐食を指摘されました。仲介をした不動産会社B社に瑕疵ではないかと確認したところ、取り合ってくれません。また、売主C氏にもこの旨を伝えたが、こちらも取り合ってはくれないという状況。ここで、A氏はB社を被申立人とするADRによってこのトラブルを解決することを選択しました。
A氏の希望は、ベランダの修繕費用の約100万円について、瑕疵担保責任を理由として、B社もしくはC氏に負担してもらうこと。一方、B社及びC氏は、そもそも現状有姿での引き渡し契約のため、瑕疵担保責任は負わないという認識を持っていました。そして、話し合いが平行線をたどる中で、A氏が第三者にホームインスペクションをしてほしい旨の申出をしたため、調停人がホームインスペクションの専門家を帯同し、A氏、B社及びC氏の立会いのもと住宅診断が行われました。
診断の結果、ベランダの腐食状態が極めて悪いと共にその危険性も認められ、A氏、B社、C氏の三者共にその早期の解決の必要性を認識し、修繕業者の選定や負担割合に関する話し合いを続けた上で、結果、A氏が2割、B社とC氏が4割ずつの費用を負担するという内容で和解となりました。
静岡県で新築戸建て住宅を購入したD氏夫妻は、購入後3カ月目に震度5の地震を経験した際に、住まいが驚くほど揺れた印象を持ちました。住み始めたばかりの物件ということもあり、仲介を行った不動産仲介会社に相談をしたところ、「そんなにご心配でしたら、ホームインスペクションをしてみたらどうですか」と言われ、夫妻はこれを実施することにしました。
ホームインスペクションの専門家が診断をしたところ、「法律上必要とされる工法と指定の部材が使用されていなかった」ことが判明。ここで説明を受けた診断結果報告と是正工事の方策を施工業者に伝えると、合理的な論拠があるとしてこれが受け入れられ、「修理にかかる費用と仮住まいの代金を施工業者が全額負担する」という返答があったため、このトラブルは収まりました。『住宅新報 2019年12月3日号より』
裁判によらず、当事者同士の話し合いによってトラブルを解決するADR(裁判外紛争解決手続)。裁判に比べて、簡易・低廉・柔軟さをもったトラブル解決が可能になるが、これは消費者だけでなく、不動産・建築事業者にとっても有益な制度である。事業者は当事者同士の板挟みとなり時間と労力を浪費していくケースも多くあるが、ここでADRという話し合いによる具体的な解決策を提案することは非常に前向きなことだ。今回は、法務大臣認証ADR機関である日本不動産仲裁機構が、インスペクションとトラブルの関係について紹介する。
国策として取り組みが行われている中古住宅流通の活性化ですが、物件売買においては少なからずトラブルが発生しています。そこで、トラブルをできるだけ未然に防ぐために制度化されたのが改正宅地建物取引業法における「中古住宅取引の際のホームインスペクション(住宅診断)の説明義務化」です。ここでは、ホームインスペクションを実施することによってトラブルが解決したという2つの事例を紹介します。
東京都内の築20年の戸建住宅を一般の売主より購入したA氏。購入から半年後、ベランダ表面部分に劣化が見られたため、防水のリフォームを業者に依頼したところ、ベランダ内部の腐食を指摘されました。仲介をした不動産会社B社に瑕疵ではないかと確認したところ、取り合ってくれません。また、売主C氏にもこの旨を伝えたが、こちらも取り合ってはくれないという状況。ここで、A氏はB社を被申立人とするADRによってこのトラブルを解決することを選択しました。
A氏の希望は、ベランダの修繕費用の約100万円について、瑕疵担保責任を理由として、B社もしくはC氏に負担してもらうこと。一方、B社及びC氏は、そもそも現状有姿での引き渡し契約のため、瑕疵担保責任は負わないという認識を持っていました。そして、話し合いが平行線をたどる中で、A氏が第三者にホームインスペクションをしてほしい旨の申出をしたため、調停人がホームインスペクションの専門家を帯同し、A氏、B社及びC氏の立会いのもと住宅診断が行われました。
診断の結果、ベランダの腐食状態が極めて悪いと共にその危険性も認められ、A氏、B社、C氏の三者共にその早期の解決の必要性を認識し、修繕業者の選定や負担割合に関する話し合いを続けた上で、結果、A氏が2割、B社とC氏が4割ずつの費用を負担するという内容で和解となりました。
静岡県で新築戸建て住宅を購入したD氏夫妻は、購入後3カ月目に震度5の地震を経験した際に、住まいが驚くほど揺れた印象を持ちました。住み始めたばかりの物件ということもあり、仲介を行った不動産仲介会社に相談をしたところ、「そんなにご心配でしたら、ホームインスペクションをしてみたらどうですか」と言われ、夫妻はこれを実施することにしました。
ホームインスペクションの専門家が診断をしたところ、「法律上必要とされる工法と指定の部材が使用されていなかった」ことが判明。ここで説明を受けた診断結果報告と是正工事の方策を施工業者に伝えると、合理的な論拠があるとしてこれが受け入れられ、「修理にかかる費用と仮住まいの代金を施工業者が全額負担する」という返答があったため、このトラブルは収まりました。
『住宅新報 2019年12月3日号より』