間もなく、18年度がスタートする。初日となる4月1日には改正宅建業法が完全施行となり、インスペクションに関するあっせん、説明などが規定される。また、安心R住宅制度も同日スタートとなる。そのほか、19年10月に行われる予定の消費増税に向けて駆け込み需要の取り込みなどのハウスメーカーの動きも活発となる。そうした18年度に始まる、起こるであろう住宅・不動産業界の動きをまとめた。 タワマン課税がスタート 高さが60メートルを超えるタワーマンションの固定資産税については、従来の専有部分の床面積で按分する方式を改めることになった。階層の違いによる床面積当たりの取引単価を反映させた補正率により、算出することとなる。この補正率は1階を100として、階が1を増すごとに、これに10を39で除した数を加えた数値とする。 40階建てのタワーマンションを例にとると、1階は約5%減、40階は約5%増となる。 タワーマンション課税の見直しについては、17年度の税制改正で盛り込まれたが、3年に一度の固定資産の評価替えのタイミングに合わせて行われるため、18年度からのスタートとなった。なお、見直しについては、18年度から新たに課税される建物が対象であり、17年4月1日前に契約したものについては、現行のままの固定資産税評価額が適用される。 これにより、節税対策として中古タワーマンションの高層階部分の引き合いが強くなることも考えられる。 なお、居住用以外の専用部分を含む場合には、建物全体の固定資産税を床面積により居住用部分と非居住用部分に按分して、居住用部分の税額を各区分所有者に按分する場合についてのみ補正率を適用する。●「安心R住宅」 既存住宅の流通促進に向け、4月1日から新たに「安心R住宅」制度(特定既存住宅情報提供事業者団体登録制度)が始まる。これは、従来の消費者が〝中古住宅〟に抱いていた「不安」「汚い」「分からない」というイメージを払しょくし、「安心」「きれい」「分かりやすい」という3要件を備えた既存住宅の流通を促進していくというもの。 具体的には、いわゆる「新耐震基準」をクリアする耐震性とリフォームの実施(具体的な提案でも可)、建物の維持保存の履歴や保険などに関する情報の開示という基準を設け、十分な品質の既存住宅に対し、国の関与のもとで同制度の登録事業者が「安心R住宅」という標章(ロゴマーク)を付与する。この標章は広告時に使用することができ、既存住宅に一定の品質を担保すると共に、消費者に対してもそれを明示するという役割を果たす。 3月23日現在、同制度で登録されている事業者団体は、「優良ストック住宅推進協議会」(17年12月登録)と「リノベーション推進協議会」(18年1月登録)、全日本不動産協会(18年3月登録)の3団体となっている。●インスペクション 4月1日から改正宅地建物取引業法が本格施行され、インスペクション(建物状況調査)制度が始まる。これは既存建物の取引業務において、媒介契約締結時と重要事項説明時、売買契約締結時にインスペクションの可否やあっせん、結果の提示などを行うことを義務付けたもの。 「安心R住宅制度」と同様、近年の住宅に関する「フローからストックへの転換」という社会背景に対応した施策で、既存住宅の取引について品質の底上げを図ると共に、消費者が安心して取引を行える環境を整備することで、既存住宅市場の活性化を目指す狙いがある。 インスペクションの実施自体は義務化されていないので、宅建業者に追加される業務としては、説明やあっせん、報告、書面への記載などになる。ただし、買主の希望によりインスペクションを行う際には、国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、既存住宅状況調査方法基準に基づいて行うよう定められている点は注意が必要だ。4月以降にインスペクションの必要が発生した場合に備え、既定の要件を満たした調査依頼先を調べておくか、既に提携するインスペクション業者や建築士などがいる場合は講習受講の有無などを確認しておくと、今後の業務がスムーズになると考えられる。●住宅宿泊事業法 これまでグレーゾーンで運営されてきた〝民泊〟は、6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)による一定の規制に基づけば、合法で事業を営めるようになった。 これに併せて、関係省庁は、17年12月に「ガイドライン」を発表した。衛生管理や騒音防止の説明、苦情や問い合わせなどに適切に対応するよう各事業者側へ求めており、一方で、「民泊制度ポータルサイト」や「民泊制度コールセンター」も開設した。 新法の施行をビジネスチャンスと捉える向きもあるが、マンション管理業協会の調査では、管理組合の8割が反対の姿勢を示す〝逆風〟の状況にもある。民泊が持つ「日常の日本を感じられる魅力」を伝えていくには、従来とかくトラブル続きだった運営方法を今後は適正に行っていくことが欠かせない。消費税経過措置期限まで1年 19年10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられる。注文住宅の場合、請負契約が19年3月31日までに完了すれば、引き渡し時期が19年10月1日以降でも、消費税は8%で対応される。それゆえ、18年の秋口から駆け込み需要が始まるという予測は根強い。積水ハウスはグループ企業である積和建設の「積和の木の家」を強化。戸建て事業へのテコ入れとして「木の家」を強化する方針だが、駆け込み需要への対応も視野に入れた取り組みだ。 一方、住宅生産団体連合会では、18年度事業計画の重点項目に「消費税率の再引上げによる住宅市場への負の影響回避」を盛り込んだ。 14年4月に実施された消費税率8%への引き上げの際には反動減対策が実施されたが、大規模な駆け込みと反動減が発生し、市場の縮小を招いた。住団連では消費税率10%への引き上げによって住宅市場の縮小が起きないように、政府に対して万全の対策実施を要望する考えを示している。
『住宅新報 2018年3月27日号より』
間もなく、18年度がスタートする。初日となる4月1日には改正宅建業法が完全施行と
なり、インスペクションに関するあっせん、説明などが規定される。また、安心R住宅
制度も同日スタートとなる。そのほか、19年10月に行われる予定の消費増税に向けて駆
け込み需要の取り込みなどのハウスメーカーの動きも活発となる。そうした18年度に始
まる、起こるであろう住宅・不動産業界の動きをまとめた。
タワマン課税がスタート
高さが60メートルを超えるタワーマンションの固定資産税については、従来の専有部
分の床面積で按分する方式を改めることになった。階層の違いによる床面積当たりの取
引単価を反映させた補正率により、算出することとなる。この補正率は1階を100として、
階が1を増すごとに、これに10を39で除した数を加えた数値とする。
40階建てのタワーマンションを例にとると、1階は約5%減、40階は約5%増となる。
タワーマンション課税の見直しについては、17年度の税制改正で盛り込まれたが、3年
に一度の固定資産の評価替えのタイミングに合わせて行われるため、18年度からのスター
トとなった。なお、見直しについては、18年度から新たに課税される建物が対象であり、
17年4月1日前に契約したものについては、現行のままの固定資産税評価額が適用される。
これにより、節税対策として中古タワーマンションの高層階部分の引き合いが強くな
ることも考えられる。
なお、居住用以外の専用部分を含む場合には、建物全体の固定資産税を床面積により
居住用部分と非居住用部分に按分して、居住用部分の税額を各区分所有者に按分する場
合についてのみ補正率を適用する。
●「安心R住宅」
既存住宅の流通促進に向け、4月1日から新たに「安心R住宅」制度(特定既存住宅情報
提供事業者団体登録制度)が始まる。これは、従来の消費者が〝中古住宅〟に抱いていた
「不安」「汚い」「分からない」というイメージを払しょくし、「安心」「きれい」
「分かりやすい」という3要件を備えた既存住宅の流通を促進していくというもの。
具体的には、いわゆる「新耐震基準」をクリアする耐震性とリフォームの実施(具体的
な提案でも可)、建物の維持保存の履歴や保険などに関する情報の開示という基準を設け、
十分な品質の既存住宅に対し、国の関与のもとで同制度の登録事業者が「安心R住宅」
という標章(ロゴマーク)を付与する。この標章は広告時に使用することができ、既存住
宅に一定の品質を担保すると共に、消費者に対してもそれを明示するという役割を果
たす。
3月23日現在、同制度で登録されている事業者団体は、「優良ストック住宅推進協議
会」(17年12月登録)と「リノベーション推進協議会」(18年1月登録)、全日本不動産協会
(18年3月登録)の3団体となっている。
●インスペクション
4月1日から改正宅地建物取引業法が本格施行され、インスペクション(建物状況調査)
制度が始まる。これは既存建物の取引業務において、媒介契約締結時と重要事項説明時、
売買契約締結時にインスペクションの可否やあっせん、結果の提示などを行うことを義
務付けたもの。
「安心R住宅制度」と同様、近年の住宅に関する「フローからストックへの転換」と
いう社会背景に対応した施策で、既存住宅の取引について品質の底上げを図ると共に、
消費者が安心して取引を行える環境を整備することで、既存住宅市場の活性化を目指す
狙いがある。
インスペクションの実施自体は義務化されていないので、宅建業者に追加される業務
としては、説明やあっせん、報告、書面への記載などになる。ただし、買主の希望によ
りインスペクションを行う際には、国の登録を受けた既存住宅状況調査技術者講習を修
了した建築士が、既存住宅状況調査方法基準に基づいて行うよう定められている点は注
意が必要だ。4月以降にインスペクションの必要が発生した場合に備え、既定の要件を満
たした調査依頼先を調べておくか、既に提携するインスペクション業者や建築士などが
いる場合は講習受講の有無などを確認しておくと、今後の業務がスムーズになると考え
られる。
●住宅宿泊事業法
これまでグレーゾーンで運営されてきた〝民泊〟は、6月15日に施行される住宅宿泊事
業法(民泊新法)による一定の規制に基づけば、合法で事業を営めるようになった。
これに併せて、関係省庁は、17年12月に「ガイドライン」を発表した。衛生管理や騒
音防止の説明、苦情や問い合わせなどに適切に対応するよう各事業者側へ求めており、
一方で、「民泊制度ポータルサイト」や「民泊制度コールセンター」も開設した。
新法の施行をビジネスチャンスと捉える向きもあるが、マンション管理業協会の調査
では、管理組合の8割が反対の姿勢を示す〝逆風〟の状況にもある。民泊が持つ「日常
の日本を感じられる魅力」を伝えていくには、従来とかくトラブル続きだった運営方法
を今後は適正に行っていくことが欠かせない。
消費税経過措置期限まで1年
19年10月1日に消費税が8%から10%に引き上げられる。注文住宅の場合、請負契約が
19年3月31日までに完了すれば、引き渡し時期が19年10月1日以降でも、消費税は8%で
対応される。それゆえ、18年の秋口から駆け込み需要が始まるという予測は根強い。積
水ハウスはグループ企業である積和建設の「積和の木の家」を強化。戸建て事業へのテ
コ入れとして「木の家」を強化する方針だが、駆け込み需要への対応も視野に入れた取
り組みだ。
一方、住宅生産団体連合会では、18年度事業計画の重点項目に「消費税率の再引上げ
による住宅市場への負の影響回避」を盛り込んだ。
14年4月に実施された消費税率8%への引き上げの際には反動減対策が実施されたが、
大規模な駆け込みと反動減が発生し、市場の縮小を招いた。住団連では消費税率10%へ
の引き上げによって住宅市場の縮小が起きないように、政府に対して万全の対策実施を
要望する考えを示している。
『住宅新報 2018年3月27日号より』