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2024年01月24日

「投資用不動産の不動産鑑定評価」不動産鑑定士が伝える投資不動産の査定

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ご挨拶



初めまして不動産鑑定士の洲浜です
この度、投資不動産流通協会のコラムを担当させていただくことになりました。
宜しくお願い致します。

私は銀行員時代に約600社の法人の融資を担当し、不動産業向けの融資も手掛け、さらには不動産業界においてリノベーション不動産コンサルタントなどを経験した後に不動産鑑定事務所を開業しました。私自身も不動産オーナーであり、その経験も踏まえて、不動産投資という市場が健全に発展できるようなお手伝いをできたらと思います。
そして、投資用不動産の売主も買主も、そして、特に不動産業者様にとっても有益となるような、お役に立てる情報をお伝えしたいと思います

私をご理解していただくうえで、僭越ながら、過去の経験をご紹介します。

①不動産鑑定会社において数多くの不動産鑑定業務を通じて、不動産の価値や市場性について研究を重ねてきています。

②銀行での長年の融資の現場(三井住友銀行20年、東京スター銀行2年)の経験があり、銀行の立場での不動産の担保価値や融資姿勢について理解しました。

③リノベーション・再販・シェアハウスの経験
不動産のリノベーション会社での業務を経験しました。つまり中古不動産を、収益性を最大に高めるための適切なリノベーションを施して、リーシングも行い、収益性、利回りを高め、最後に売却する業務です。リノベや用途変更などについての役所との交渉も大変でした。建築士の方と一緒に図面を引く作業は楽しいものでした。

④不動産コンサルタント
不動産コンサルティング会社(三光ソフランホールディングス)で不動産のコンサルタントさせていただきました。つまり不動産投資セミナーを開催し、お客様との個別相談において一個々の資産、家族、価値観に応じたアドバイスをしてまいりました。ですから、一通りの個別的なコンサルタントは経験しているわけです。

⑤不動産オーナーの経験
私はサラリーマンをしながら自己資金とローンを使って約9000万のアパートを買いました。それは土地から買いました。新築木造3階アパートの不動産事業を実行するわけですから、資金調達、管理、運営まで、初の体験で大変でしたが、なんとかやりきりました。

そしてアパート経営を8年した上で売却をし、当初の自己資金を約3倍にして投資を成功させることができました。
この様な経験も皆様のお役に立てると思います。



【売主側の不動産仲介会社の方へ】



収益不動産の販売とその価格についてお話ししますが、まずは、売主側についた不動産業者さん向けの話をします。

収益不動産の売却を検討しているオーナー様に対して、その売却の業務を任されるためには、不動産業者様は、どのようなことが求められるでしょうか?

まずは、オーナー様に対する信頼が必要です。
投資用不動産の販売は営業の方が担当されると思いますが、「カン」と「経験」だけで売っているのではないでしょうか?
それは再現性があるとは言えません。

私のコラムを読んでいただければ、売主に「いくらで売却可能なのか」について説明できるようになるでしょう。なぜなら、経済動向、近隣地域の動向、その不動産の優位性などを理解したうえで、不動産業界の慣習、銀行の融資姿勢なども踏まえて、いくらで売れるのかを理解できるからです。うまく売却に成功すれば、あなたは売主に信頼される参謀役のような存在になれるでしょう。



【そもそも投資不動産(収益不動産)とは何か?】



みなさんが取り扱う投資不動産つまり収益不動産とは、いったい何なのでしょうか?人によって思い込みなどで違いがあるかもしれません。
ここで、不動産鑑定評価上の定義について触れておきます。

不動産鑑定評価の基準で言えば、収益不動産は「貸家及びその敷地」の類型(※1)に属します。
そして「貸家及びその敷地」とは、
「建物所有者とその敷地の所有者が同一人物であるが建物が賃貸借に供されている場合における当該建物及びその敷地」と定義されています。

(※1)類型とは、評価基準の取り決めで、建物とその敷地をグループに分けたもの。例えば「自用の建物及びその敷地」「貸家及びその敷地」「借地権付き建物」「区分所有建物及びその敷地」などに分けられます

貸家及びその敷地の鑑定評価は実際実質賃料に基づく純収益等の現在価値の総和を求めることにより得た収益価格を標準とし積算価格及び基準価格を比較衡量して決定するものとします。この場合において次の事を勘案しなければなりません

1.将来における賃料改定の実現性とその程度
2.契約にあたって授受された一時金の額及びこれに関する契約条件
3.将来見込まれる一時金の額及びこれに関する契約条件
4.契約締結の経緯、経過した借家期間及び残存期間並びに建物の残存耐用年数
5.貸家及びその敷地の取引慣行並びに取引利回り
6.借家の目的、契約の形式、登記の有無、転借か否かの別及び定期建物賃貸借(※)か否かの別
7.借家権価格



【不動産の鑑定評価とはなにか?日本の鑑定評価制度】



実際の取引の場においては、あまり意識されることもないのですが、そもそも不動産の価格についての法律があります。参考のため説明します。

昭和30年以降、国内の地価が著しく高騰し、公共用地の取得が困難となり、同時に、劣悪な住宅地の投機的取引等の問題を引き起こし、国民生活に重大な影響を与えることとなりました。この問題に対処するため、昭和37年に建設省に審議会が設置されました。そして、その会は合理的な地価形成のための制度が必要性を指摘し、「不動産鑑定評価制度」が提案されました。そして、昭和38年7月「不動産の鑑定評価に関する法律」として公布されたわけです。

以上のように、不動産鑑定の法律があり、収益不動産についての定義も定められてはいます。しかし実際に使われる場面は銀行の担保評価や競売、裁判における利害関係の調査の際の資産の査定や、節税対策における財産の評価などです。

不動産会社で売買をご担当されているあなたにとって、鑑定評価制度は深く知る必要はありません。

但しある程度、鑑定評価制度のこと知っていることで、オーナーの信頼を得たり、他のライバルに差をつけることができるかもしれません。

次回は不動産売却について話をします。