九州地方に大きな被害をもたらした『令和2年7月豪雨』により、周辺の不動産会社が対応に追われている。被害物件の復旧作業に加えて、被災者の住宅提供も必要となり、問題は山積している。
被災者の物件提供難航
最も被害の大きかった熊本県人吉市で約150戸管理している京成不動産(熊本県人吉市)では、管理物件の約半数にあたる75戸が被害を受けた。水漏れ程度から床下、床上浸水など、被害の大きさは違っているものの、一時的に生活することが難しくなった物件が多い。
営業部の木村泰大氏は「7月頭から対応に追われている。物件の改修よりも、被災者への物件提供の問い合わせが多い」と話す。同社では、提供できる物件が枯渇し始めている点を懸念している。
「人吉市にある空室が底を突き始めている。近隣の八代市までは車で30分費やすため、高齢者などは抵抗がある」(木村氏)大手企業をはじめとして、被災者に対して空室を無償提供する動きが広がっているが、どこまでカバーできるかは不透明な状態だ。
管理戸数800戸を抱える不動産のウラタ(熊本県人吉市)でも、スタッフが4日から休日返上で豪雨被害の対応にあたっている。
4日に起きた豪雨により、電話回線が一時断絶。7日夕方に復旧するまで、オーナーや入居者への安否確認も難しい状況だったという。「実際の被害状況が把握できるのは、これからだろう」と浦田澄子専務は話す。
熊本県八代市に本社を構えるトヨオカ地建(熊本県八代市)では、降雨量が落ち着いた12日より、浸水した人吉市の物件復旧業務を行っている。2階部まで水が漬かった物件に社員ら3人が向かった。通路の泥かきや部屋の清掃に1日を費やしたが、まだ終わらないという。入居者10人は全員無事だったものの、うち2人は一時的に物件に取り残され、救出されるまで緊迫した状況が続いた。
坂本淳執行役員は「被害が1物件で済んだものの、管理物件が多い八代市で起こっていたら、対応できなかっただろう。災害時の管理の在り方を考えさせられた」と話す。
2300戸管理のミヤタ不動産(鹿児島県鹿屋市)では、管理物件に影響は出なかったものの、本社1階の仲介店舗が20cmほどの高さまで浸水した。「会社の前が冠水し、川ができていた」と宮田直宣社長。コピー機やパソコンなどが水没する被害となった。
同社では今後、起こり得る事態を想定して、早急に対策を取る。「これから台風シーズンを迎える。今回で被害が終わるとは思っていない。2、3次被害を起こさないように細心の注意をしたい」と宮田社長は話す。
大東建託、九州豪雨被災者へ支援
大東建託(東京都港区)は6日、令和2年7月豪雨で被災した家主、入居者に対する支援を実施することを発表した。
賃料や原状回復費など無償化 支援策は、賃貸住宅の無償提供と、住み替え契約の優遇措置の2つだ。
一つ目の無償提供の期間は約2カ月。今回の豪雨災害により、現在の建物での継続居住が困難になった、同社の家主や同社の物件の入居者を対象とする。家賃の他に礼金、駐車場料金、共益費、クリーニング費、町内会費、仲介手数料、退去時の原状回復費用が無償となる。家具家電も提供するという。
二つ目の住み替え契約の優遇措置では、豪雨災害で継続居住が困難となった、同社の管理物件の入居者が対象。一つ目の支援策との併用は不可能だが、賃料1カ月分を無料とし、礼金、クリーニング費用、保証会社委託料、仲介手数料を無償とする。二つの支援策共に期限は8月末まで。
特に被害の甚大な熊本県で、同社の管理する物件は2万1698戸に上っている。8日現在では、九州地方で同社の管理する物件のうち、床上浸水以上の被害があった物件は43棟288戸だが、今後さらに増加することが見込まれる。同社広報部の柏木綾氏によると、「大東建託リーシング各店舗、大東建託パートナーズ各営業所への問い合わせは来ているが、対応に追われており、支援策がどの程度反響数があるかは現状ではわからない」と話す。
なお、同支援策の終了期限である8月末までに建物の修繕が終わらない場合は、支援策で入居した住居に新規で賃貸借契約を締結してもらう予定だという。
支援策の延長や追加施策については、現状実施予定はない。だが、「行政の対応策を鑑み、今後の被害状況により随時検討していく」(柏木氏)と話した。
駅前不動産も住居供給
福岡県を中心に2万戸弱を管理する駅前不動産ホールディングス(福岡県久留米市)も10日、被災者に向け、住宅の無償提供を決定した。
約100世帯分の空室を確保
対象エリアは、福岡、佐賀、熊本(荒尾市、玉名市)。現時点で案内可能な住宅は100世帯ほどという。対象物件は、現在空室の所有物件、借り上げ物件。また、一部で無償提供に賛同してもらったオーナー所有物件も含む。
入居時費用が無料で、3~6カ月間に限り家賃支払いを免除する。り災証明の提出が条件。入居者の要望があれば、無償で家具・家電・寝具も設置するという。同社では、全店舗での相談受付と被災者専用ダイヤルを設置し対応にあたる。
大牟田エリアで被害が軽微だった2店舗と管理会社に、すでに100件以上の住み替えの相談が来ている。無償提供できる住宅への入居申し込みはすでに5件あり、うち3件は家具・家電の貸し出しも希望しているという。
全国賃貸住宅新聞 掲載URLhttps://www.zenchin.com/news/27-6.php『週刊全国賃貸住宅新聞 7月20日号より』
情報提供:株式会社 全国賃貸住宅新聞社
九州地方に大きな被害をもたらした『令和2年7月豪雨』により、周辺の不動産会社が対応に追われている。被害物件の復旧作業に加えて、被災者の住宅提供も必要となり、問題は山積している。
被災者の物件提供難航
最も被害の大きかった熊本県人吉市で約150戸管理している京成不動産(熊本県人吉市)では、管理物件の約半数にあたる75戸が被害を受けた。水漏れ程度から床下、床上浸水など、被害の大きさは違っているものの、一時的に生活することが難しくなった物件が多い。
営業部の木村泰大氏は「7月頭から対応に追われている。物件の改修よりも、被災者への物件提供の問い合わせが多い」と話す。同社では、提供できる物件が枯渇し始めている点を懸念している。
「人吉市にある空室が底を突き始めている。近隣の八代市までは車で30分費やすため、高齢者などは抵抗がある」(木村氏)大手企業をはじめとして、被災者に対して空室を無償提供する動きが広がっているが、どこまでカバーできるかは不透明な状態だ。
管理戸数800戸を抱える不動産のウラタ(熊本県人吉市)でも、スタッフが4日から休日返上で豪雨被害の対応にあたっている。
4日に起きた豪雨により、電話回線が一時断絶。7日夕方に復旧するまで、オーナーや入居者への安否確認も難しい状況だったという。「実際の被害状況が把握できるのは、これからだろう」と浦田澄子専務は話す。
熊本県八代市に本社を構えるトヨオカ地建(熊本県八代市)では、降雨量が落ち着いた12日より、浸水した人吉市の物件復旧業務を行っている。2階部まで水が漬かった物件に社員ら3人が向かった。通路の泥かきや部屋の清掃に1日を費やしたが、まだ終わらないという。入居者10人は全員無事だったものの、うち2人は一時的に物件に取り残され、救出されるまで緊迫した状況が続いた。
坂本淳執行役員は「被害が1物件で済んだものの、管理物件が多い八代市で起こっていたら、対応できなかっただろう。災害時の管理の在り方を考えさせられた」と話す。
2300戸管理のミヤタ不動産(鹿児島県鹿屋市)では、管理物件に影響は出なかったものの、本社1階の仲介店舗が20cmほどの高さまで浸水した。「会社の前が冠水し、川ができていた」と宮田直宣社長。コピー機やパソコンなどが水没する被害となった。
同社では今後、起こり得る事態を想定して、早急に対策を取る。「これから台風シーズンを迎える。今回で被害が終わるとは思っていない。2、3次被害を起こさないように細心の注意をしたい」と宮田社長は話す。
大東建託、九州豪雨被災者へ支援
大東建託(東京都港区)は6日、令和2年7月豪雨で被災した家主、入居者に対する支援を実施することを発表した。
賃料や原状回復費など無償化
支援策は、賃貸住宅の無償提供と、住み替え契約の優遇措置の2つだ。
一つ目の無償提供の期間は約2カ月。今回の豪雨災害により、現在の建物での継続居住が困難になった、同社の家主や同社の物件の入居者を対象とする。家賃の他に礼金、駐車場料金、共益費、クリーニング費、町内会費、仲介手数料、退去時の原状回復費用が無償となる。家具家電も提供するという。
二つ目の住み替え契約の優遇措置では、豪雨災害で継続居住が困難となった、同社の管理物件の入居者が対象。一つ目の支援策との併用は不可能だが、賃料1カ月分を無料とし、礼金、クリーニング費用、保証会社委託料、仲介手数料を無償とする。二つの支援策共に期限は8月末まで。
特に被害の甚大な熊本県で、同社の管理する物件は2万1698戸に上っている。8日現在では、九州地方で同社の管理する物件のうち、床上浸水以上の被害があった物件は43棟288戸だが、今後さらに増加することが見込まれる。同社広報部の柏木綾氏によると、「大東建託リーシング各店舗、大東建託パートナーズ各営業所への問い合わせは来ているが、対応に追われており、支援策がどの程度反響数があるかは現状ではわからない」と話す。
なお、同支援策の終了期限である8月末までに建物の修繕が終わらない場合は、支援策で入居した住居に新規で賃貸借契約を締結してもらう予定だという。
支援策の延長や追加施策については、現状実施予定はない。だが、「行政の対応策を鑑み、今後の被害状況により随時検討していく」(柏木氏)と話した。
駅前不動産も住居供給
福岡県を中心に2万戸弱を管理する駅前不動産ホールディングス(福岡県久留米市)も10日、被災者に向け、住宅の無償提供を決定した。
約100世帯分の空室を確保
対象エリアは、福岡、佐賀、熊本(荒尾市、玉名市)。現時点で案内可能な住宅は100世帯ほどという。対象物件は、現在空室の所有物件、借り上げ物件。また、一部で無償提供に賛同してもらったオーナー所有物件も含む。
入居時費用が無料で、3~6カ月間に限り家賃支払いを免除する。り災証明の提出が条件。入居者の要望があれば、無償で家具・家電・寝具も設置するという。同社では、全店舗での相談受付と被災者専用ダイヤルを設置し対応にあたる。
大牟田エリアで被害が軽微だった2店舗と管理会社に、すでに100件以上の住み替えの相談が来ている。無償提供できる住宅への入居申し込みはすでに5件あり、うち3件は家具・家電の貸し出しも希望しているという。
全国賃貸住宅新聞 掲載URL
https://www.zenchin.com/news/27-6.php
『週刊全国賃貸住宅新聞 7月20日号より』
情報提供:株式会社 全国賃貸住宅新聞社