学生の賃貸需要に急ブレーキ|全国賃貸住宅新聞|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

業界ニュース

2020年10月07日

学生の賃貸需要に急ブレーキ

 学生にアパートを賃貸仲介する不動産賃貸会社の間で、一人暮らし需要の減少を懸念する声が広がっている。大学のオンライン講義の継続で、遠方の実家に滞在するケースも増え、問い合わせの減少を感じる会社が増えているからだ。学生がアパートを解約して実家に帰るケースもある。それに加えて、外国人留学生の退去後の空室増加を不安に思う会社もあった。影響の程度はさまざま。現場の実態を伝える。


「オンライン講義の継続」が逆風に

 東京都心から電車で約30分、埼玉県・南与野駅近辺で約1000戸の賃貸住宅を管理する三愛ハウス(埼玉県さいたま市)では、近隣の大学の「オンライン講義」継続により、賃貸仲介事業がダメージを受けている。

 管理物件の入居者のうち約半分を学生が占めており、中でも埼玉大学の生徒の割合が高い。三愛ハウス近くからバス10分の距離にある埼玉大学が7月3日、後期日程のオンライン講義の継続を周知したことで、例年なら8月に同大の学生から最低10件ほど来る部屋探しの相談がなくなった。

 島村昭敏社長は「しばらく、埼玉大学の学生の新規入居を期待することは難しいだろう」と語る。管理物件からの解約は一部にとどまるが、新型コロナウイルス感染拡大が長期化すれば、さらなる解約が出かねない。

 同社は今後、経費削減に努める。営業時間を1時間短縮し、人件費を圧縮。その上で、同社の収益の約半分を占める不動産売買事業に力を入れ、減収分を補いたい考えだ。

 賃貸仲介件数の落ち込みを感じている企業は、地方都市にもある。それが、石川県で約9000戸を管理する苗加不動産(石川県金沢市)だ。入居者のうち7割が大学生。大学生の中でも割合が多いのが、金沢大学の学生だ。ほか、北陸大学、金沢星陵大学、金沢学院大学などがメインとなる。

 経営を揺さぶるほどのダメージを受けているわけではない。しかし5月以降、学生からの問い合わせ件数がほとんどなかった。苗加充彦社長は「例年5月以降は富山県や福井県などの県外の実家に住みながら金沢の大学に通う学生から『やっぱり学校付近で一人暮らししたい』という相談がきて、県内に住み替える。だが、今年は動きが鈍い」と振り返る。

 一方、入居率は手堅く推移している。例年と同じ94~96%の範囲内。学生の退去者は、苗加社長が把握する限りではほとんど出ていない。「アパートを借りつつ実家に帰っている学生は一定数いるだろう。残りの学生生活もあるから様子見を続けているのでは」と推測する。金沢大学で、全授業の約半分で「オンライン講義」を継続する旨を発表している。大学に通う機会はほとんどの生徒に残されていることになる。

 オンライン講義の影響を受けているのは、都内で国際学生寮2棟324室を運営するユニネスト(東京都港区)も同じだ。地方の学生が上京してこず、賃貸の申し込み・契約のキャンセルが20件ほど出ている。

 しかし、それ以上に同社を苦しめているのが、外国からの渡航制限だ。4月に来日するはずの新しい短期留学生が入ってこず、退去が出た後の入れ替え需要が消失。同社の管理物件には2人・4人部屋もあり、ベッド数でいうと690床ある。入居率は22%に落ち込んだ。運営担当者の黒井悠司氏は「現在の入居者は約150人にとどまる」と説明する。渡航制限がかかる前に一時的に帰国していた学生が戻ってこられなくなり、空室が続くケースも見られた。

 元々、同社では入居者の割合は短期留学生と国内需要とで半々だった。しかし今後は、渡航制限が解除されない限りは、国際交流をしたい日本人、4年制大学に入学している外国人留学生らの国内需要で乗り切らなくてはならない状況になる。先の黒井氏は「ターゲットは変えず『国際学生寮』という看板も下ろすことはない」とも語り、あくまでも自社ブランドを守りながら、感染対策を強化しつつ、立て直しを図りたい考えだ。


全国賃貸住宅新聞 掲載URL
https://www.zenchin.com/news/post-5335.php
『週刊全国賃貸住宅新聞 8月11日号より』

情報提供:株式会社 全国賃貸住宅新聞社