新型コロナウイルスの影響による入居者の家賃滞納に備えて、「住宅確保給付金」の案内を入居者に行う事が多くの記事やブログなどで書かれている。
しかしオーナーの中には、これさえ申請してもらえば、入居者の家賃が3ヶ月、最大9ヶ月給付されるので心配ないと思っている方もいるかもしれないが単純にそうではない。
今回はこの住宅確保給付金について確認していこうと思う。 事前にその仕組や給付方法を改めて知っておくことはオーナーとしては重要なことである。
■生活困窮者自立支援制度の中の住宅確保給付金
平成27年から始まった「生活困窮者自立支援制度」による支援の1つで、離職等により経済的に困窮し住宅を喪失した方もしくは喪失するおそれのある方に国や自治体が家賃相当額を支給し、住まいと就労機会の確保に向けた支援を行うものである。
「生活困窮者自立支援制度」は厚生労働省が管轄する制度で、次のような支援を行うことになっている。
自立相談支援事業 支援プランの作成
住居確保給付金の支給 家賃相当額の支給
就労準備支援事業 6カ月から1年の間のプログラムで基礎能力向上と就労支援や就労機会の提供
家計相談支援事業自ら家計管理できるように、支援計画の作成、相談支援、貸付のあっせん等を行う
就労訓練事業 一般就労することが難しい方のために、その方に合った作業機会を提供しながら、個別の就労支援プログラムに基づき、一般就労に向けた支援を中・長期的に実施する、就労訓練事業もある。
生活困窮世帯の子どもの学習支援 子どもの学習支援、居場所づくり、進学支援、高校進学者の中退防止支援等。
一時生活支援事業 住居をもたない人やネットカフェ等の住居形態にある人に、宿泊場所や衣食を提供。
このような立付けの中にある制度が「住宅確保給付金」である事を理解しておきたい。
■住宅確保給付金とは
住宅確保給付金とは、離職や廃業、休業などによる収入減少(以下、離職等という。)により経済的に困窮し、住居を失った、またはそのおそれのある方に原則3ヶ月、最大9ヶ月、家賃相当額を自治体から家主に支給するものだ。
2020年4月20日から新型コロナウイルスの影響により要件が緩和されており、より多くの人が対象になった。 制度のポイントは、H27年9月14日の「生活困窮者自立支援制度全国担当者会議」資料によれば、 ①一定程度、就労能力のある(就労経験のある)方に ②再就職に向け、原則3ヶ月という期間において集中して支援するという事である。
「住宅確保給付金」と文字通り給付金なので貰える資金である。 もし入居者が職を失ったり、収入が減って家賃が払えなくなったら、真っ先にこの制度を紹介して手続きしてもらうのが先決である。
「給付」を貰うことに躊躇したり、自分が対象になるのかわからないと言って、手続きをしない人もいるかもしれない。 ただし給付金を紹介するだけで良いかというとそうではないのだ。
■支給対象者 制度の基本の対象は以下のとおりである。(取り消し線は条件緩和中) ・申請日において65歳未満であって、離職等後2年以内の者 ・離職等の前に世帯の生計を主として維持していたこと・ハローワークに求職の申し込みをしていること ・国の雇用施策による給付等を受けていないこと
新型コロナの影響による要件緩和は、4月20日に「離職・廃業から2年以内」という条件に限らず、職はあっても休業などで減収した人も申請できるようにした事と、4月30日から当分の間、「求職活動をする」という支給の条件を撤廃した。
そして新型コロナウイルスの影響による休業などで収入が減ったものの、失業はしていないという人も申請できるようになった。 条件においては65歳未満の条件は、緩和されていない事は覚えておきたい事である。
■支給要件 支給要件は、収入要件と資産要件と就職活動要件の3つがあるが、就職活動要件は当分撤廃である。 収入要件:申請月の世帯収入合計額が、基準額(市町村民税均等割が非課税となる収入額の1/12)+家賃額以下であること。 資産要件:申請時の世帯の預貯金合計額が、基準額× 6(ただし100万円を超えない額)以下であること。
■支給額 賃貸住宅の家賃額で上限額は住宅扶助特別基準額になっている この支給要件と支給額については、後で説明するがオーナーは理解しておくべきだ。
■相談窓口 この住宅確保給付金の相談窓口は市町村の役場ではない。自立相談支援機関と呼ばれる相談窓口である。 自立相談支援機関は自治体ごとに定められている。 定められていない時には、都道府県、市町村に問い合わせするようになっている。 自分の物件のある自治体の相談窓口は確認しておくと良い。自立相談支援機関 相談窓口一覧(令和2年5月25日現在)
■自治体よって違う支給要件と支給額 全国の各自治体によって家賃の支給上限額は大きく変わってくる。
代表的な都市を一覧表にまとめたが、東京都内でも大きな差がある事がわかる。自分の物件のある自治体のホームページ等で事前に調べておくことをすすめる。
このように、金額の上限が決まっているので、その超過分を免除するか、超過分を猶予するのか、又はそれ以外の方法を、予め自分の物件の家賃額によっては考えておく必要がある。
また自治体によっては住宅確保給付金の案内ページすら用意していないところもある。 だからこそ、オーナーが事前に調べておくのが良い。 今のところ対象となる支給者の月収基準は以下のとおりとなる。 札幌市を例にすると 単身世帯:8.4万円+家賃額(上限額3.6万円)=12万円 2人世帯:13.0万円+家賃額(上限額4.3万円)=17.3万円 3人世帯:17.2万円+家賃額(上限額4.6万円)=21.8万円 札幌市の単身世帯では、12万円未満の月額収入になったら使える給付金だと言うことだ。
東京都中央区であれば 単身世帯:8.4万円+家賃額(上限額6.98万円)=15.38万円 2人世帯:13.0万円+家賃額(上限額7.5万円)=20.5万円 3人世帯:17.2万円+家賃額(上限額8.1万円)=25.3万円 東京都中央区の単身世帯では、15.38万円未満の月額収入になったら使える給付金だと言うことだ。
■支給方法 先にも述べたが支給方法は、自治体から貸主や管理会社への直接支払いである。 その申請書を見ておこう。横浜市の案内に様々な書式が揃っている。
申請者が用意する書類は本人確認の書類や収入が減少した証明や、世帯全員の現在高を記帳した預金通帳や収入を確認できる書類、賃貸借契約などの他に、「入居住宅に関する状況通知書」が必要になる。
この「入居住宅に関する状況通知書」には貸主又は不動産媒介業者等(管理会社)の捺印と振込口座の記載が必要になっている。 この書類が添付されて申請となるので、手続きの流れをオーナーは覚えておくと良い。 家賃は住宅の貸主又は管理会社等の口座に振り込まれ、他の資金に使われる心配はない。(支給日は1日)
未曾有の新型コロナの経済的な影響は5月まではあまり目立たずにいるようだが、この先6月以降から本格化するとも言われている。 「住宅確保給付金」の知識は入居者を守ると同時に、オーナー自身を守る事にもなる。
繰り返すが、オーナーは自分の物件のある自治体のホームページ等で事前に家賃上限額を調べておく事と、住宅確保給付金の相談窓口である「自立相談支援機関」を予め調べておいた方が良い。
『健美家ニュース 2020年6月4日より』
詳しくはこちら↓
https://www.kenbiya.com/ar/ns/policy/subsidy/4037.html
新型コロナウイルスの影響による入居者の家賃滞納に備えて、「住宅確保給付金」の案内を入居者に行う事が多くの記事やブログなどで書かれている。
しかしオーナーの中には、これさえ申請してもらえば、入居者の家賃が3ヶ月、最大9ヶ月給付されるので心配ないと思っている方もいるかもしれないが単純にそうではない。
今回はこの住宅確保給付金について確認していこうと思う。
事前にその仕組や給付方法を改めて知っておくことはオーナーとしては重要なことである。
■生活困窮者自立支援制度の中の住宅確保給付金
平成27年から始まった「生活困窮者自立支援制度」による支援の1つで、離職等により経済的に困窮し住宅を喪失した方もしくは喪失するおそれのある方に国や自治体が家賃相当額を支給し、住まいと就労機会の確保に向けた支援を行うものである。
「生活困窮者自立支援制度」は厚生労働省が管轄する制度で、次のような支援を行うことになっている。
自立相談支援事業
支援プランの作成
住居確保給付金の支給
家賃相当額の支給
就労準備支援事業
6カ月から1年の間のプログラムで基礎能力向上と就労支援や就労機会の提供
家計相談支援事業
自ら家計管理できるように、支援計画の作成、相談支援、貸付のあっせん等を行う
就労訓練事業
一般就労することが難しい方のために、その方に合った作業機会を提供しながら、個別の就労支援プログラムに基づき、一般就労に向けた支援を中・長期的に実施する、就労訓練事業もある。
生活困窮世帯の子どもの学習支援
子どもの学習支援、居場所づくり、進学支援、高校進学者の中退防止支援等。
一時生活支援事業
住居をもたない人やネットカフェ等の住居形態にある人に、宿泊場所や衣食を提供。
このような立付けの中にある制度が「住宅確保給付金」である事を理解しておきたい。
■住宅確保給付金とは
住宅確保給付金とは、離職や廃業、休業などによる収入減少(以下、離職等という。)により経済的に困窮し、住居を失った、またはそのおそれのある方に原則3ヶ月、最大9ヶ月、家賃相当額を自治体から家主に支給するものだ。
2020年4月20日から新型コロナウイルスの影響により要件が緩和されており、より多くの人が対象になった。
制度のポイントは、H27年9月14日の「生活困窮者自立支援制度全国担当者会議」資料によれば、
①一定程度、就労能力のある(就労経験のある)方に
②再就職に向け、原則3ヶ月という期間において集中して支援するという事である。
「住宅確保給付金」と文字通り給付金なので貰える資金である。
もし入居者が職を失ったり、収入が減って家賃が払えなくなったら、真っ先にこの制度を紹介して手続きしてもらうのが先決である。
「給付」を貰うことに躊躇したり、自分が対象になるのかわからないと言って、手続きをしない人もいるかもしれない。
ただし給付金を紹介するだけで良いかというとそうではないのだ。
■支給対象者
制度の基本の対象は以下のとおりである。(取り消し線は条件緩和中)
・申請日において65歳未満であって、
離職等後2年以内の者・離職等の前に世帯の生計を主として維持していたこと
・ハローワークに求職の申し込みをしていること・国の雇用施策による給付等を受けていないこと
新型コロナの影響による要件緩和は、4月20日に「離職・廃業から2年以内」という条件に限らず、職はあっても休業などで減収した人も申請できるようにした事と、4月30日から当分の間、「求職活動をする」という支給の条件を撤廃した。
そして新型コロナウイルスの影響による休業などで収入が減ったものの、失業はしていないという人も申請できるようになった。
条件においては65歳未満の条件は、緩和されていない事は覚えておきたい事である。
■支給要件
支給要件は、収入要件と資産要件と就職活動要件の3つがあるが、就職活動要件は当分撤廃である。
収入要件:申請月の世帯収入合計額が、基準額(市町村民税均等割が非課税となる収入額の1/12)+家賃額以下であること。
資産要件:申請時の世帯の預貯金合計額が、基準額× 6(ただし100万円を超えない額)以下であること。
■支給額
賃貸住宅の家賃額で上限額は住宅扶助特別基準額になっている
この支給要件と支給額については、後で説明するがオーナーは理解しておくべきだ。
■相談窓口
この住宅確保給付金の相談窓口は市町村の役場ではない。自立相談支援機関と呼ばれる相談窓口である。
自立相談支援機関は自治体ごとに定められている。
定められていない時には、都道府県、市町村に問い合わせするようになっている。
自分の物件のある自治体の相談窓口は確認しておくと良い。
自立相談支援機関 相談窓口一覧(令和2年5月25日現在)
■自治体よって違う支給要件と支給額
全国の各自治体によって家賃の支給上限額は大きく変わってくる。
代表的な都市を一覧表にまとめたが、東京都内でも大きな差がある事がわかる。自分の物件のある自治体のホームページ等で事前に調べておくことをすすめる。
このように、金額の上限が決まっているので、その超過分を免除するか、超過分を猶予するのか、又はそれ以外の方法を、予め自分の物件の家賃額によっては考えておく必要がある。
また自治体によっては住宅確保給付金の案内ページすら用意していないところもある。
だからこそ、オーナーが事前に調べておくのが良い。
今のところ対象となる支給者の月収基準は以下のとおりとなる。
札幌市を例にすると
単身世帯:8.4万円+家賃額(上限額3.6万円)=12万円
2人世帯:13.0万円+家賃額(上限額4.3万円)=17.3万円
3人世帯:17.2万円+家賃額(上限額4.6万円)=21.8万円
札幌市の単身世帯では、12万円未満の月額収入になったら使える給付金だと言うことだ。
東京都中央区であれば
単身世帯:8.4万円+家賃額(上限額6.98万円)=15.38万円
2人世帯:13.0万円+家賃額(上限額7.5万円)=20.5万円
3人世帯:17.2万円+家賃額(上限額8.1万円)=25.3万円
東京都中央区の単身世帯では、15.38万円未満の月額収入になったら使える給付金だと言うことだ。
■支給方法
先にも述べたが支給方法は、自治体から貸主や管理会社への直接支払いである。
その申請書を見ておこう。
横浜市の案内に様々な書式が揃っている。
申請者が用意する書類は本人確認の書類や収入が減少した証明や、世帯全員の現在高を記帳した預金通帳や収入を確認できる書類、賃貸借契約などの他に、「入居住宅に関する状況通知書」が必要になる。
この「入居住宅に関する状況通知書」には貸主又は不動産媒介業者等(管理会社)の捺印と振込口座の記載が必要になっている。
この書類が添付されて申請となるので、手続きの流れをオーナーは覚えておくと良い。
家賃は住宅の貸主又は管理会社等の口座に振り込まれ、他の資金に使われる心配はない。(支給日は1日)
未曾有の新型コロナの経済的な影響は5月まではあまり目立たずにいるようだが、この先6月以降から本格化するとも言われている。
「住宅確保給付金」の知識は入居者を守ると同時に、オーナー自身を守る事にもなる。
繰り返すが、オーナーは自分の物件のある自治体のホームページ等で事前に家賃上限額を調べておく事と、住宅確保給付金の相談窓口である「自立相談支援機関」を予め調べておいた方が良い。
『健美家ニュース 2020年6月4日より』
詳しくはこちら↓
https://www.kenbiya.com/ar/ns/policy/subsidy/4037.html