不動産現場での意外な誤解 売買編156 抵当権者(法人)の所在が不明でも仲介できる?|住宅新報|業界ニュース|一般社団法人 投資不動産流通協会

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2021年08月31日

不動産現場での意外な誤解 売買編156 抵当権者(法人)の所在が不明でも仲介できる?

Q 以前のこのコーナーに、所有者不明土地に関連し、その土地に登記されたままになっている、いわゆる「休眠担保権」の抹消手続の問題が取り上げられていましたが。

 
A それは、〔売買編〕の第124回の内容だと思います。


Q 実は、先日、当社にある土地の相続人から、その土地に登記されている抵当権者(会社)の所在が不明で、債務者がその土地の名義人(被相続人)の弟だという物件が持ち込まれましたので、早速その弟(債務者)に会って話を聞いたところ、債務の弁済は既に完了しているのだが、肝心の抵当権の抹消書類を紛失してしまい、登記がそのままになっていると。
このような土地でも、抵当権を抹消できるのでしょうか。

 
A できます。その土地は、所有者が不明の土地ではありませんので、通常の手続で抹消ができます。
その理由は、この土地は抵当権が消滅した後に土地の所有者が死亡したケースですから、土地所有権の相続登記を行う必要はなく、相続人のうちの1人が抹消登記の申請をするだけでできるからです。

 
Q しかし、この土地は抵当権者である会社の所在が不明なのですが、それでも抹消ができるのですか。

 
A できます。所在が不明といっても、会社自体が行方不明(不動産登記法70条の概念)ではありませんので、会社の登記簿(解散、清算結了後は閉鎖登記簿)が存在する限り、「行方不明」とはみなされないからです(昭和63年7月1日民三3456号法務局長通達)。
そう考えると、そのほとんどは、本店や商号を変更しているというケースでしょうから、そうであれば、その変更を証明する書面を申請書に添付すれば、直ちに抹消登記の申請をすることができるからです(昭和31年9月20日民甲2202号民事局長通達)。

 
なお、これに関連した改正として、令和3年4月21日所有者不明土地との関連で改正された不動産登記法の中に、法人の解散後、清算人の所在が不明のために共同で担保権の抹消申請ができない場合に、債権の弁済期から30年が経過し、かつ、法人の解散の日から30年が経過したときは、不登法60条の規定にかかわらず、登記権利者(債務者)が単独で抹消申請することができる旨の規定が設けられました(同法70条の2)。


渡邊不動産取引法実務研究所
代表 渡邊 秀男


住宅新報 2021年8月31日号より