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業界ニュース

2020年04月21日

賃料助成制度が浮上 新型コロナ 滞納リスク回避へ対応急ぐ 全宅連が国に要望書 住居確保給付金を周知

 4月16日に安倍晋三内閣総理大臣が緊急事態宣言の対象を全都道府県に拡大することを表明するなど、新型コロナウイルス感染症の被害が加速度的に深刻さを増してきた。外出自粛や感染抑止策の影響により、飲食店などを営む事業者の経営環境が悪化しているほか、休業や解雇などに伴い収入が減少する労働者も増加傾向にある。これにより、商業施設やテナントビル、住宅など賃貸物件の賃料支払いが困難になるケースが発生している。国は不動産業界団体に〝柔軟な対応〟を要請したが、業界団体や企業はどのように受け止め、また対応しているかをまとめた。

 飲食店等のテナント賃料については、国土交通省が3月31日に不動産業界6団体に「支払いの猶予に応じるなど、柔軟な措置の検討」を要請。また4月9日には同様に、不動産賃貸事業者が利用可能な支援策を周知する通知を送った。更に4月17日、テナント賃料の減免などで事業収入が一定以上減少した場合、税や社会保険料などの納付を1年間猶予する措置についても公表、通知した。

 これらを受け、特に3月31日の要請に対し、中小事業者の会員を多く抱える全国宅地建物取引業協会連合会(全宅連、坂本久会長)が、その趣旨に理解を示しつつ、国による追加支援が必要だと判断。4月15日、菅義偉内閣官房長官と赤羽一嘉国土交通大臣宛てに要望書を提出。改めて17日に要望のため官邸で面会した坂本会長に菅官房長官は、「1兆円の特別交付金の裁量は知事にまかされているので可能である」と回答した。

中小の窮状訴える 同要望書で全宅連は、「会員企業からは『オーナーへの一方的な協力要請だけでなく、合わせて支援措置を』との声が強まっている」「中小賃貸事業者は賃料収入が途絶えれば事業が継続できなくなる」と述べ、財務基盤の弱い中小事業者の窮状を訴えた。

 具体的には、政府の「緊急経済対策」で設けられた「減免賃料に係る税務上の損金算入措置」「中小・個人事業者等への給付金制度」「中小事業者に対する納税猶予および固定資産税減免措置」の速やかな実施を要望した。これに加えて、同経済対策に盛り込まれた地方自治体への臨時交付金1兆円の使途について、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている中小事業者等(テナント)に対する賃料助成制度を設け、代理納付などで確実に賃料支払いに充てられる措置を求めた。

 坂本会長は「先般の減免賃料の損金算入や固定資産税の減免措置等に加え、更に踏み込んだ措置として、テナントへの賃料助成制度の創設が必要だ。これにより賃料の支払いの流れが確保され、テナントとオーナーがウィンウィンになる」とコメントしており、実現への意欲を示した。

支給対象を拡大

 賃貸住宅市場でも家賃滞納に警戒感が高まっている。日本シェアハウス協会(山本久雄会長)では、入居者の家賃滞納リスクに不安を感じ始めた会員の声を受け、このほど厚生労働省の家賃支援制度の概要を会員向けに情報発信した。賃貸住宅の入居者が申請することによって、自治体から賃貸住宅の大家に給付金を支給するもの。

 生活困窮者自立支援法に基づく住居確保給付金で、厚労省では新型コロナの感染拡大状況を踏まえ、同法施行規則を一部改正し、これまで「離職・廃業後2年以内の者」としていた支給対象を拡大。4月20日から、勤務先の経営悪化や休業などで収入が減少して住居を失う恐れがある人も対象に加えた。

 収入や資産基準などの条件を満たした場合、原則3カ月間、自治体から賃貸人や不動産媒介事業者などに代理納付される。支給額の目安は、例えば東京都特別区の場合、単身世帯で5万3700円となる。

 同協会では、「具体的な相談行動は入居者の判断になるが、こうした制度があるという情報を提供し〝入居者ファースト〟の姿勢で、入居者を応援してほしい」としている。また、同協会では、シェアハウスならではの入居者支援提案も行っている(5面に関連記事)。

支払い猶予始まる 大東建託グループは4月20日から、新型コロナウイルス感染症の影響により収入が減少した入居者を対象として、3カ月間を上限に賃料の支払い猶予措置を始めた。個人や法人の入居契約を問わず、同グループがオーナーから一括借り上げして管理する全国の賃貸建物の入居者に対して分割払いに応じる。

 猶予するのは家賃のほか、駐車場代、共益費、自治会費とする。申請の時から最長2年間の分割払い(2年以内に退去する場合は退去時に一括支払い)とし、希望者の申請を6月末日まで受け付ける。申請方法など詳細は、大東建託パートナーズのホームページに掲載している。

 このほか、同様な賃料支払いの猶予措置については、東急住宅リースが状況に応じて個別に対応しているほか、レオパレス21は現在検討中としている。北斗グループ(埼玉県所沢市)は、所有する賃貸不動産の入居テナントの売り上げの減少幅に応じて家賃減額を実施すると4月7日に発表している。

『住宅新報 2020年4月21日号より』